入居金は数億円超え、豪華な設備、親切なスタッフ――。「定年退職後は高級老人ホームでのんびり過ごしたい」と考え、老後資産を蓄えた富裕層も多い。甚野博則氏が『ルポ 超高級老人ホーム』で描いたのは、金額や設備以上に、入居者同士の関係性や、働く人、経営者の姿勢が居心地を左右するという事実だった。本稿では、『潜入取材、全手法』を上梓した横田増生氏とともに、限られた人のみを招き入れる“高級老人ホームでの暮らし”について考えていく。(企画・構成:ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

「定年後は高級老人ホームでのんびり」のはずが、“予想外の支出”が爆増する理由Photo: Adobe Stock

いつまで生きるか、
いくら掛かるか?

――年末年始の帰省は、親子で老後について話し合う限られた機会でもあります。『ルポ 超高級老人ホーム』に描かれる、富裕層向けの超高級老人ホームの内側についてどう思われましたか。

横田増生(以下、横田):特に、施設で提供される食事が気になりました。実際どれぐらい美味しいのか。でも、そんなの入ってみないと分かんないもんね。入ってる人はそんなに情報発信しないだろうし。だからこの取材、なかなか難しかったんじゃないですか。施設の入居者になるのはまず無理じゃないですか。

 それでも色んな人に色んな角度から話を聞いて、施設のカタログを鵜呑みにしたらいけないっていうのが分かるのが面白いなって。

甚野博則(以下、甚野):実際に入居者と同じ食事を食べさせてもらったりしましたが、高齢じゃない人が食べるとしたら物足りない感じはしました。だけど、それが介護施設だとしたら、正直悪くはないと思うんですよね。超高級ではない介護施設も取材しているので、そこと比べたら確かに食事はいいです。

横田:でも、それも一食ごとにまたコストが発生するんですよね。そういう意味で、老人ホームの値段ってどれだけ寿命があるかによって違うから、一概に考えられないところが悩ましい。

 たとえばこれが中学校や高校の学費だったら、6年間って決まってるからある程度費用が分かるわけじゃないですか。塾だとかプラスアルファがあるけれども。

 でも、老人ホームではそれとは違う難しさはすごく感じる。100歳まで生きたらどれだけお金を持っていればいいんだろう。85歳で亡くなるのと15年も違うじゃないですか。

甚野:なので、超長生きしても全然お金に困らない、というぐらいの人が入れる施設でもあるんです。