「俺流」は成功体験の呪縛

――なぜ「俺流」では行き止まるのでしょうか。

鈴木:「考える」という意味では、結局「俺流」に至ることも十分あるわけですよね。でも、何も考えずに「俺流」だと問題です。「本当に俺流でうまくいくかな」みたいなことは考えてほしいです。

 たとえば会食で、Aというレストラン行ったら相手がすごく喜んでくれて、おかげで関係が深まったとします。でも、別の人ともAというレストランに行ったらいいかというと、そうじゃないだろうって感じがするでしょう。次の相手も同じプランで喜んでくれるとは限らないからです。要するに「今回の相手はこういう雰囲気好きかな」みたいなことを考えていない。

本間:それが「知的な想像者」っていうことになる。「経験」や「持論」は否定されるものではないけど、球種は1つでも多く覚えておくのがいい。それに、行ったことのあるレストランからしか店選びができない人よりも、「ビールが飲めてカジュアルなお店はないかな」「今日は静かに食事ができる場所」って想像できるのかいいですよね。

「行ったお店から選ぶ」だと“経験学習”だし、「初めての会食は必ず居酒屋がいいのである」っていうのは“持論”だよね。だからこの幅を広げていく。とにかく、「どんな相手か」というところから始める。

鈴木:そして相手とどうなりたいか、とかね。結局はどういう関係を作りたいかなんだと思います。

(本稿は、鈴木竜太教授の新刊『リーダーシップの科学』の発売を記念した特別対談です)

鈴木竜太(すずき・りゅうた)
神戸大学大学院経営学研究科教授
1971年生まれ。1994年神戸大学経営学部卒業。ノースカロライナ大学客員研究員、静岡県立大学経営情報学部専任講師を経て、現職。専門分野は経営組織論、組織行動論、経営管理論。主な著書に『組織と個人』(白桃書房:経営行動科学学会優秀研究賞)、『自律する組織人』(生産性出版)、『関わりあう職場のマネジメント』(有斐閣)、『(はじめての経営学)経営組織論』(東洋経済新報社)。共著に『組織行動』(有斐閣)。共編著に『お仕事マンガの経営学』(有斐閣)などがある。

本間浩輔(ほんま・こうすけ)
・パーソル総合研究所取締役会長
・朝日新聞社取締役(社外)
・環太平洋大学教授 ほか
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。著書に『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社)、『1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める』(吉澤幸太氏との共著、ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著、光文社新書)、『残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社新書)がある。