後妻の使い込みを立証するのが
「非常に困難」なワケ
遺産の独り占めを許せない美和子さんは、恵子さんに対し、使い込まれた5000万円を取り戻すための遺産分割調停に踏み切りました。
しかし、ここで大きな壁にぶつかります。生前の預金引き出しが「不当な使い込み」であったことを立証することは非常に困難だったのです。
恵子さんが「夫婦の生活費や介護費用として使った」と主張すれば、その立証を覆すのは容易ではありません。特に義伸さん自身が認知症ではなかったため、亡くなる数カ月前まで自らの意思で引き出しや振り込みをしていました。
そのため贈与契約も不当とは言い切れません。このケースでは、裁判所の判断を待つ事態となっています。
専門家が解説
後妻トラブルから資産を守る方法とは
この事例のように、高齢になった親の財産が、後に現れた交際相手との出会いをきっかけに、資産が急激に減るトラブルは少なくありません。資産を守り、子どもたちが本来受け取るべき財産を確保するためには、生前からの対策が不可欠です。
そこで、相続を専門とし多数の後妻トラブルの経験もある大村隆平弁護士に取材しました。
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おおむら・りゅうへい/2010年に一橋大学法科大学院卒業、同年司法試験合格。11年に弁護士登録、弁護士法人ロウタス法律事務所入所。19年に雨宮眞也法律事務所に移籍。弁護士登録以来、一貫して相続事件に注力。
――まず、このケースで娘の立場になった場合、生前にできる対策はあるでしょうか。
大村弁護士 教科書的な回答ですと「家事信託、任意後見契約等の手段によって、父親の財産を子が管理できるようにするという方法があります」ということになりますが、これらの手段はあくまでも父親が当事者として行う方法です。
父親の意思に反して子どもだけで行える方法ではありません。父親に判断能力があり、かつ、その父親が後妻に入れ込んでいたらこれらの手段は使えません。
ですので、弁護士の口からこのようなことを申し上げるのは心苦しいのですが、「妙な女が入り込む隙がないように、お父さんと仲良くしておきましょう!」としか言えないというのが正直なところです。
他方、父親の判断能力が明らかに低下していれば、父親に成年後見人を付けることによって、父親の財産管理を父親あるいは後妻から成年後見人に移すことができますので、これはかなり有効な手段になり得ます。
とはいえ、やはり「妙な女が入り込む隙がないように、お父さんと仲良くしておく!」というのが最善な手段であることには変わりないと考えます。
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親子間の
信頼関係づくりを大切に
高齢の親が再婚したことで、想定していた相続財産が大幅に減少する――本記事で紹介した事例は、決して珍しいものではありません。
後妻との関係で生じた支出は、たとえ子どもから見て不自然でも、本人の意思に基づくものであれば違法とされにくいのが現実です。「親が元気なうちから良好な親子関係を保ち、生活や交友関係を把握しておくこと」が肝要です。
相続対策は、亡くなってからでは手遅れになることも少なくありません。高齢期の再婚や交際が増える現代だからこそ、早めの話し合いと信頼関係づくりが欠かせないでしょう。
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