夫が亡くなった後に届いた封筒、ぼうぜんと立ち尽くす母が見たもの写真はイメージです Photo:PIXTA

生前は仲の良い夫婦、親子関係だったのに、夫あるいは妻が亡くなった後に「家族に知らされていなかったこと」が発覚するケースは決して少なくない。大切な家族を亡くし、打ちひしがれている中で、突きつけられる重大な問題と対峙していかなくてはいけない。実際にあった事例をもとに、虎ノ門法律経済事務所横須賀支店の中村賢史郎弁護士に話を聞いた。(ライター 岩田いく実、監修/虎ノ門法律経済事務所 中村賢史郎弁護士)

夫が亡くなった後に届いた封筒
ぼうぜんと立ち尽くす母が見たもの

 家族に知らされていなかったことが、亡くなった後に発覚するケースは決して少なくありません。

 本記事では真面目な夫に先立たれた女性が、四十九日法要を終えた矢先に過酷な二択を迫られることになった実例を紹介します。

 千葉県に暮らす専業主婦の美枝子さん(70歳・仮名)は、夫の智雄さん(享年75歳・仮名)の四十九日法要を終えたばかりでした。結婚して50年。

 一人息子の隆志さん(47歳・仮名)にも恵まれ、穏やかな人生を過ごしてきました。生前の智雄さんは地元で溶接加工の小さな町工場を営み、地域の人から「職人かたぎの真面目な人」と慕われる存在でした。

 智雄さんが65歳の時、後継ぎがいないことや、経営の悪化で工場を閉めることになりました。その後、智雄さんの肺にがんが発覚。5年にわたる闘病の末、亡くなられました。

 法要後、普段は都内に妻と子と暮らしながら食品メーカーの営業として働く隆志さんに、美枝子さんから震える声で電話がありました。慌てて隆志さんは実家に向かうと、そこにはぼうぜんと立ち尽くす美枝子さんがいました。