玄関女性写真はイメージです Photo:PIXTA

老親が離れて暮らしている場合、なかなか異変に気付くことができない。本記事では、実例を基に、久しぶりに実家に帰宅した娘が見た「父の異変」と、なぜ堅実な性格の父の預金通帳から9000万円が消えていたのかについて詳しく解説する。どう対策すればよかったのか、大村隆平弁護士に聞いた。(ライター 岩田いく実、監修/大村隆平弁護士)

通帳から消えた
9000万円

 子どもと離れて暮らす高齢者は増加傾向にあります。そうした老親が狙われ、9000万円もの資産が消えたという実例をもとに、具体的な手口を解説します。狙われた際の対処法について、相続案件を専門とする大村隆平弁護士に取材しました。

 都内に夫と2人で暮らす夏美さん(仮名・42歳)は、栃木県出身。大学進学の際に都内に引っ越し、その後現在に至るまで都内に居住。一人娘だということもあり、実家には年に2回欠かさずに帰省してきました。

 10年前に母の君枝(仮名)さんが突然の脳出血で他界。父の光男さん(仮名・75歳)はその後、栃木県内で自己所有する自宅に一人で暮らしていました。

「母が亡くなったとき、都内で一緒に暮らそうかと誘ったのですが、慣れない土地で暮らすのを嫌がったんですよ。母も祀る実家の仏壇は田舎によくある大きなサイズで都内には持っていけないから、栃木に残ると言っていたんです。正直、世間の70代はお元気な方が多いので、父も大丈夫だろうと思っていました」

 光男さんは軽度のリウマチを患い、定期的に通院していましたが食欲もあり、散歩も楽しんでいる様子でした。

 しかし、そんな光男さんに異変が起きたのは2年前のこと。堅実な性格で栃木県内の金融機関に長年勤務し、退職後も資産運用を続けていたため1億円程度の預貯金があった光男さんの通帳には、1000万円の数字しか残されていなかったといいます。