職場で「仕事が早い」と言われているけれど、実は家のことは全然できていないし、大掃除は何もやっていない――。そんな「後ろめたさ」を抱えたまま、ついに年末を迎えてしまった人は意外と多いのではないだろうか。
仕事納めまで全力疾走して、ふと我に返ると、家のなかは荒れ放題。「後でやろう」と思っているうちに、気づけば年内のゴミ収集はすべて終わってしまった…。ゴミ袋の山と共に年を越すことが確定し、絶望している人もいるかもしれない。
実は、こうした「仕事はできるのに、家の中だけは片づかない」という悩みを持つ人は、想像以上に多いという。外では完璧に仕事をこなせるのに、なぜ家の中だけは片づかないのだろうか。
そこで、登録者数19万人の人気YouTube「イーブイ片付けチャンネル」運営者であり、書籍『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』の著者でもある二見文直氏に、「仕事が早いのに大掃除が進まない人の意外な共通点」と「3つの対策」について伺った。（構成／樺山美夏、ダイヤモンド社・和田史子）
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仕事最優先の「責任感」が部屋を散らかす
二見文直（ふたみ・ふみなお）株式会社ウインドクリエイティブ代表取締役。YouTubeチャンネル「イーブイ片付けチャンネル」運営者。一般社団法人遺品整理士認定協会認定遺品整理士。生前整理技能Pro1級。月平均130軒以上のお宅を訪問し、これまで1万件以上の片づけを経験。年間約5000件以上の相談を受け、のべ4万件を超える全国からの「片づけられない」悩みと向き合ってきた。2016年にスタートしたYouTube「イーブイ片付けチャンネル」は、登録者数19万人を突破（2025年12月現在）。『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』（ダイヤモンド社）は初の著書。
ありがたいことに、年末のこの時期にはたくさんの片づけ依頼をいただきます。なかでも駆け込みで僕たちに依頼をしてくださる方は、社会的に信頼されている方が多いという実感があります。
そういう方たちは「人に迷惑をかけたくない」という意識があるため、常に仕事を第一優先にされます。みなさん非常に責任感が強い印象です。
その反動として、「自宅は足の踏み場もないんです」と申し訳なさそうにおっしゃる依頼者さんも少なくありません。客観的に見れば「仕事はできるのに部屋は汚い」というのは矛盾しているように見えますが、まったく矛盾していないのです。
なぜなら、「人に迷惑をかけたくない」という思いが強いからこそ、誰にも迷惑をかけない「自分だけの問題（片づけや大掃除）」は後回しにしてしまうからです。真面目で心優しいビジネスパーソンで、おそらく職場では頼りになる存在でしょう。
メールに即レスするタイプの人が陥りやすい罠
この「仕事最優先」の姿勢は、日常のちょっとした場面にも表れます。たとえば、仕事の休憩中に「今すぐ来てほしい」と連絡が入ったとき、「すぐに行きます！」と即座に反応するタイプです。メールやメッセンジャーの返事も「即レス」。フットワークが軽く、スケジュールも分刻みで入れています。
一方で、そういう人たちに仕事を頼む人たちは、「じゃあ、ついでにこれを渡しておいて」と丸投げしてます。この人ならちゃんとやってくれるという安心感があるからです。
頼まれたほうは責任感が強いため、「いいよ」と引き受けますが、結果として自分の時間はどんどんなくなってしまいます。このように、自分のことなど後回しで「お客様第一」「相手第一」と考えるため、周囲からの評価は非常に高いのです。
みなさんも、「これは急ぎだから今すぐやらなきゃ」というタスクと、「これは後でいいか」というタスクを瞬時に区別しているはずです。しかし、その「後でいいか」の対象が常に「自分のこと」になりがちで、いつの間にか忘れてしまってはいないでしょうか。
仕事ができるのに、経費請求は間に合わない
こういうタイプの人の多くは、メールは即レスなのに経費請求が苦手だったりします。
相手のためにはすぐ動けるのに、いざ自分のこととなると後回しに。
そのさいたるものが、経費請求だったりします。
みなさんも経験あるのではないでしょうか。
仕事における「すぐに対応すること」と、プライベートでの「後回しにすること」。この差が積み重なった結果、部屋がどんどん散らかっていきます。これは能力の問題ではなく、優先順位という価値観の違いによる習慣にすぎません。
「自分でやったほうが早い」が片づけを阻む
片づけられない人のもう一つの特徴として、「自分でやりたがる」という点が挙げられます。
「人に任せるのが苦手」「自分がやった方が早い」が口癖になっていて、何でも自分で完結させようとします。この傾向も仕事においては「責任感がある」と高く評価される要因ですが、片づけにおいては裏目に出ることが多いのです。
なぜなら、「自分で納得できるようにやりたい」と思うあまり、「誰かに片づけを手伝ってもらおう」「このあたりのモノは回収業者に頼もう」といった、タスクを分散させる発想が出てこないからです。
その結果、すべてを一人で抱え込み、負担が大きくなってしまいます。結局、「時間があるときにやろう」と先送りし、実行できないまま放置してしまうという悪循環に陥るのです。
ここにさらに、「頼まれたら断れない」という性質が加わると、状況はより深刻になります。仕事を引き受けすぎて時間を奪われ、片づけどころではなくなるからです。
つまり、片づけられない人の多くは、「だらしない人」とは正反対の「責任感が強すぎる人」であり、「NOと言えない優しい人」なのです。それだけに、自分を後回しにしすぎてストレスを溜め込み、心身の不調を招いてから私たちに連絡してこられる方も少なくありません。
他人のために時間を使いすぎる人への、3つの処方箋
では、自分のためより他者のために時間を使い、仕事を完璧にこなそうとする人は、どうすればこの状況を変えられるのでしょうか。解決の鍵は、根本的な価値観や行動パターンに沿った改善策を見つけることです。
1. 小さな「NO」から始めてみる
急な仕事を頼まれたとき、すべてを引き受けるのではなく、「今日は手いっぱいなので、明日ならできます」というように、代替案とセットで「NO」を伝えてみましょう。これなら角が立たず、自分の時間を確保しやすくなります。
2. 片づけを「イベント」にして他者を巻き込む
自分一人だと「面倒だ」とあきらめがちですが、家族を巻き込むと継続しやすくなります。たとえば、年末の大掃除も「家族のイベント」にしてしまうのがおすすめです。
「今日は15時から17時までゴミ捨て大作戦！ それが終わったら焼肉を食べに行こう！」とご褒美を用意すれば、子どもたちも乗り気で協力してくれるでしょう。自分のものは自分で片づけ、不用品はみんなで処分する。こうしてタスクを分散させるのがポイントです。
ひとり暮らしの人であれば、思い切って友人や家族、親戚を、年明けに呼んじゃいましょう。「散らかった部屋ではおもてなしはできない」と、一気に片づけモードに突入するはずです。人のためならがんばれるタイプが多いので、「誰かのため」というモチベーションをうまく利用するのです。
3. プロに任せて環境をリセットする
それもできないほど忙しい場合は、私たちのようなプロに任せるのも一つの手です。
以前、あるシングルマザーの依頼者さんが、「子どもたちのために引っ越したいから」と部屋の片づけを依頼されました。モノとゴミであふれていた部屋をきれいにし、新居へ引っ越された後、なんとその方は昇進して社長になられたのです。苦手なことは得意な人に任せて、代わりに自分が得意なことで周囲に貢献する。こうした決断ができれば、仕事も家もすっきり片づくというわけです。
自分の環境を整える時間は、長い目で見れば気持ちの余裕を生み出します。そしてその余裕こそが、結果として仕事のパフォーマンス向上にもつながるのです。
あなた自身の生活の快適さも大切にしながら、仕事に集中する。そのバランスを意識することから始めてみてください。
『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』二見文直著、ダイヤモンド社刊
1万軒以上片づけたプロが
自信を持って伝える、“捨てるコツ”
＜著者からのメッセージ＞
1万軒の片づけ作業を行う傍ら、お客様から本当にたくさんのお声を伺ってきました。
「どう手をつけていいのかわからない」
「やってもやっても終わらない」
「片づけたのにごちゃごちゃして落ち着かない」
「きれいになったと思ったらすぐまた元通り……」
「実家がモノ屋敷。なんとかしたい」
多くのお声は、片づけたいと本心で思っているにもかかわらず、なぜか片づけることができない。自分を責め、誰にも相談することができないという悲痛なものでした。
この本を出版するに至ったのは、このように悩んでいるお客様を救いたいという思いがあったからです。
まず、悩んでいるみなさんに伝えたいのは、
「片づけができないのは、あなたや親御さんのせいではない」ということ。
そして
「片づけは必ず終わる」
という2点です。
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たくさんのお家を片づけてきてわかったのは、そもそも“正しいやり方を知らないこと”が片づかない原因になっているケースが非常に多いということです。つまり、正しいやり方を知れば、片づけの悩みは解消できるんです。
私たちプロがやっていることや、片づけの現場で教えてもらったやり方を、1冊にまとめました。
「片づけ」や「収納」ではなく
「捨てる」をテーマにした理由
これまで1万軒以上のお家を片付ける中で、実は片づかないお家にはある共通点があることに気がつきました。
それは、どのお家も「モノが多すぎる」ということです。モノが多すぎる状態でいくら整理整頓や片づけをしようとしても、それはやっぱり無理なんです。つまり、"捨てる"からすべてを始めなければなりません。
とにかく捨てることの大切さを知っていただきたい。そして捨てる決断をできたことが自信になり、ひいては片づけに対する苦手意識やコンプレックスも"捨てられる"ようになっていただきたいと思っています。
「本当の意味でモノを大事にすることがわかった」
「家族が安心して暮らすためのやり方が知れた」
「この本のおかげで捨てられるようになった」
本を読んだ方たちから、このようなお声をいただきました。
「もったいない」から「手放したい」へ！
捨てるのが苦手な人でもできる「コツ」が満載
この本は、いわゆる「ミニマリストになろう！」という本ではありません。
服や靴などのお気に入り、こだわりを持って集めているものや好きなものなどを手放す必要はないのです。
大事なことは、自分や家族にとって「本当はいらないのかもしれない」というモノに気づき、処分していくことです。
捨てることへの抵抗感がある人や、片づけは苦手という人でもできるような「小さなコツ」をこの本ではたくさん紹介しています。
「捨ててOKなものが何かわかった！」
「今まで何冊も片づけや収納の本を読んできたけれど、はじめて知ったコツが多く、目からウロコだった！」
「片づけの現場を知っているプロならではのやり方に納得した」
といった意見もいただきました。
登録者数17万人、人気YouTube「イーブイ片付けチャンネル」について
著者が運営するイーブイ片付けチャンネルは、登録者数17万人、総再生数7500万回を突破しているYouTubeチャンネルです。大阪市の清掃業者「イーブイ」が運営、ゴミ屋敷や遺品整理など、いまや社会問題となっている片づけについて日々の現場からリアルを発信しています。依頼者さんに徹底的に寄り添う、彼らの真摯な姿勢を応援するファンも多い。
