承認欲求をコントロールするための心構え
安達氏は、承認欲求そのものを否定しない。
「コミュニケーションにおいて“話が上手になること”よりもはるかに大切なことがあります。それは“承認欲求をどうコントロールするか”です」(p.117)
承認欲求は誰にでもある。問題は、それをどこに向けるかだ。
「『へえ、そうなんだ! すごいね! そういえば私さ……』このようになんでもすぐに自分の話をしようとする人がいます。相手の話に反応はしつつも、すぐ自分の話に引き込もうとする人です。(中略)しかし、それは自己アピールによって承認を得ようとする態度であり、コミュニケーション強者の態度とはいえません」(p.121)
つい「そういえば自分も」と言いたくなる。
相手の話に乗っかる形で、自分の経験をアピールしたくなる。
でも、それは矢印が自分に向いている状態だ。
「認められたい」を「役に立ちたい」に変える
安達氏によれば、承認欲求をコントロールするには、こう考えればいいという。
「コミュニケーション強者の胸の内はこうです。『相手が承認を求めているのであれば、思い切り承認してやろう。逆に、私が彼に承認されるかどうかは、私が彼に何をしてやったかによる』と」(p.122)
自分が認められたいなら、まず相手を認める。
自分が承認されるかどうかは、相手に何を与えたかで決まる。
「では人はどのようなときに、他者を承認したくなるのでしょうか? それは、“親切にされたとき”です。つまり、結果を出した上で、他者に親切にできる人が、他者から承認を得て、信頼されるのです」(p.122-123)
会議で存在感を出したいなら、賢そうな発言をするのではなく、相手が困っていることを一緒に考える。
そのほうが、結果的に「この人はちゃんと考えてくれる」と評価される。
本書を読み終えて、自分の会議での振る舞いを振り返った。
「賢く見せたい」が先に立っていなかったか。
発言の前に「この場の結論は何か」を押さえ、そこに必要な判断材料だけを出す。「賢そうに見える言葉」ではなく「決めやすくなる情報」を渡せたとき、浅さの印象は消えていくのだ。
(本稿は『頭のいい人が話す前に考えていること』に関する書き下ろし記事です)
山守麻衣(やまもり まい)
実績200冊超の書籍ライター。早稲田大学第一文学部卒業後、50代からのライフスタイル月刊誌『いきいき』(現ハルメク)の編集者として5年勤務。その後、独立。健康書、ビジネス書を中心に医師、教授、経営者、著名人の構成多数。自身と娘2人の中学受験を経験。自著に『ワーママ時間3倍術』。
実績200冊超の書籍ライター。早稲田大学第一文学部卒業後、50代からのライフスタイル月刊誌『いきいき』(現ハルメク)の編集者として5年勤務。その後、独立。健康書、ビジネス書を中心に医師、教授、経営者、著名人の構成多数。自身と娘2人の中学受験を経験。自著に『ワーママ時間3倍術』。









