『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、推薦入試はいつから対策を始めるべきなのかについて解説します。
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「高校3年生から推薦対策を始めればいい」は、ほぼ通用しない
「推薦入試を考えているのですが、高3で塾に行けば何とかなりますよね?」
こういう質問を、自分は非常によく受けます。一般入試の感覚で考えれば、「高3から本気で頑張る」という発想は自然です。実際、一般入試であれば、高3の1年間で成績を大きく伸ばす人もいます。
しかし、推薦入試においては、この感覚はほぼ通用しません。
現実として、高校3年生から推薦入試を目指して塾に通い、合格する人はいます。ただし、それは本当に一握りです。しかも、その一握りの人たちも、実際には高1・高2の段階ですでに十分な経験や思考の蓄積があり、それをうまく整理できただけ、というケースがほとんどです。
だからこそ、私が運営している推薦入試専門の塾では、原則として高校3年生からの新規入会をお断りしています。これは冷たい判断ではありません。むしろ、その方が誠実だと思っているからです。
理由は明確です。高校3年生になってから、慌ててボランティアや課外活動を始めても、ほとんど意味がないからです。
推薦入試で評価されること
推薦入試で評価されるのは、「何をやったか」ではなく、「その経験を通して何を考え、どう変わったか」です。高3になってから始めた活動は、どうしても“受験のためにやった感”が強くなりますし、本人の中で十分に消化される前に、出願時期を迎えてしまいます。
大学側は、その違和感を見抜きます。短期間で量産された活動や、きれいに整えられすぎたストーリーは、面接や書類で簡単に崩れます。どれだけ言葉を飾っても、中身が伴っていなければ評価されません。
そもそも、高校3年生の役割は、「新しい体験をしに行くこと」ではありません。
高1・高2までに積み重ねてきた経験を、振り返り、整理し、言語化すること。それが、高3でやるべきことです。
この点は、一般入試との決定的な違いです。一般入試では、「高3から頑張る」は成立します。しかし、推薦入試では成立しません。推薦入試は、短期集中型の試験ではなく、時間をかけて形成された思考や姿勢を評価する試験だからです。
だから私は、「高3から推薦対策を始めよう」と考えている人には、はっきりと伝えています。それでは遅いです、と。
理想を言えば、高1から。もっと言えば、中学生の段階から、「自分は何に興味があるのか」「どんな違和感を持っているのか」「なぜそう感じたのか」を考え、言葉にする習慣を持っていないと、推薦入試で戦うのはかなり厳しくなります。
これは才能の問題ではありません。準備の時期の問題です。推薦入試は、「頑張った人が報われる試験」ではありません。「考え続けてきた人が評価される試験」です。
だからこそ、高校3年生は“スタートライン”ではなく、“まとめの年”なのです。この前提を知らずに動いてしまうと、どれだけ努力しても、報われない結果になってしまいます。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




