ぼくが約半世紀にわたって書いてきた曲を、オリジナルの歌い手の歌唱やカバーで振り返る、というコンサートだ。
駆け出しの専業作詞家として書いたのはアグネス・チャンさんの「ポケットいっぱいの秘密」(1974年)。この公演で初めて、彼女が生で歌っているところを見た。会場が丸ごと、70年代にワープする。そんな新旧の歌の数々を、井上鑑さん率いるバンドが完璧な演奏でひとしきり支えた後、最後に登場するのが、細野(晴臣)さんと(鈴木)茂、そしてぼくの「はっぴいえんど」だ。
演奏がグルーブして
武道館に渦が見えた
茂が作曲した「花いちもんめ」を演奏していた終盤、細野さんのベースとぼくのドラムがカチッと合って、ものすごく良いグルーブが生まれた。もともと、茂がリードギターを弾いてコードをひと回りしたらエンディングに入る、という段取りになっていたのだが、松本・細野のグルーブにあおられて茂のギターが止まらなくなり……。これ、いつ終わるんだろう、どうするんだろう、昔みたいだね、1970年ぐらいはそうだったな、茂の気の済むまでやってもらおう、あ、細野さん、そこ歌詞が……。
そんなことを思いながら叩いていたら、目の前に渦が見えた。武道館の場内は真四角ではなく、八角形のまるい空間。そのまるいところに渦が見えた。2日間ともだ。武道館がとても狭く感じられた。初日のステージに上がる前、ぼくは細野さんに「高校の部活みたいにやろう。かっこつけないで緩くやろう」と話したのだが、まさに高校の部室にでもいるような感覚だった。
出演者も客席も、みんなが和気あいあいと、ひとつの輪になっていた。「ひとつになろう」と言ってもそう簡単にはいかないものだが、この輪は本物だった。ヒット曲への単なる懐かしさでもなく、「メディアとユーザー」という無機的な関係でもなく。歌い手も演奏者も聴き手も、ぼくの書いた歌とともに育ち、それぞれに人生の山も谷も通過し、今この場所にいる――。そんな半世紀の蓄積が見せてくれた渦だったのかもしれない。ほんとにドラマーなんだよ、という身の証しも立てられた2日間だった。(2022年4月2日)







