子どもたちが音楽の授業を楽しめない理由を探る写真はイメージです Photo:PIXTA

「音楽の授業はつまらない...」そう感じたことはないだろうか。人気アイドルグループFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」「NEW KAWAII」などで知られる作詞作曲家のヤマモトショウでさえ「音楽の授業が苦手だった」と語っている。合唱に偏った授業の限界、音楽教育の残念な現状を手がかりに、子どもたちが音楽の授業を楽しめない理由を探る。※本稿は、ヤマモトショウ『歌う言葉 考える音――世界で一番かわいい哲学的音楽論』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

ヒット曲作曲家の筆者でも
譜面を読むのは辿々しい

 あなたは楽譜を読むことができますか?

 私についていえば、作曲を仕事にしているのであれば、楽譜が読めるなんてことは当然だろうと思うかもしれません。

 しかし作曲家だ、と名乗らなければ「楽譜が読める」というだけで、割と「すごい」となったりするのではないでしょうか。

 じつは私は、いわゆる音大や音楽の専門学校で、音楽に関して専門的な教育を受けたことがありません。私が受けた音楽教育は、子供の頃少しだけ通ったピアノ教室と、小中高校での音楽の授業のみです。

 楽譜については、ゆっくり読めば書いてあることの内容は読み取れますが、見てすぐにそれをピアノで弾いたり、歌ったりすることはできません。また、自分のつくった曲を楽譜に書き起こせといわれても、相当な時間がかかりますし、正直やりたくありません。

 古典の時代からつい最近まで、作曲というのは基本的に譜面を書き起こすことと同意義だったので、作曲を仕事にする者にとって楽譜を書いたり、読んだりすることは最も基本的な技能であったと思います。もちろん、それは演奏する側にとってもそうです。

デモテープが主流になった
現代の音楽業界で譜面は不要

 しかし、録音技術が進歩して、演奏者にとってはそれがどんな曲か知るのにはまず「音を聴けばよい」という状況が生まれました。楽器を演奏する人の中にはいわゆる「耳コピ」といって、楽曲を聴いてその演奏されているものを聴き取って覚えて演奏することが得意な人も多くいます。