『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、親たちが直面する“早期英語教育の落とし穴”について解説します。

英語Photo: Adobe Stock

英検を取ったのに、英語力が落ちた

最近、親御さんと話していて強く感じるのは、「英語力をどう伸ばすか」よりも、「英語力をどう維持するか」が大きな関心事になってきているということです。

少し前までは、「小学生のうちに英検◯級を取りたい」「できるだけ早く英語を得意科目にしたい」という相談が中心でした。

ところが最近は、話のトーンが変わっています。

「小学生のときに英検2級を取ったんですが、その後、英語力が下がってしまって……」
「英検を早く取ったのに、高校生になったら英語が全然読めなくなっている気がします」

こうした声を聞く機会が、明らかに増えました。

実際、現場では珍しくありません。小学生の段階で英検2級、場合によっては1級に近い力を持っていた子が、中学生・高校生になるにつれて英語から距離を取り、最終的には「共通テストの英語リーディングが6割しか取れなかった」というケースもあります

英語力が低下する理由

親からすると、これはかなりショックな出来事です。「あれだけ早くから英語をやっていたのに」「英検まで取ったのに、どうして?」と思うのは当然でしょう。

しかし、この現象には、はっきりした理由があります。英語力は、触れていないと確実に下がるからです。英語は、算数や数学とは性質が違います。公式を一度理解すればしばらく使える、というものではありません。読む、聞く、考える、という行為を、日常的に続けていないと、驚くほどあっさりと感覚が鈍ります。語彙は抜け、文章を読むスピードは落ち、内容を把握する力も弱くなる。

特に、小学生の段階で英語力が高かった子ほど、中学以降に「英語を勉強しなくても何となくできる」という状態に入りやすい。すると、英語に触れる時間が減り、気づいたときには周囲に追い抜かれている、ということが起きます。

想像以上に「環境」が重要

ここで重要なのは、「英検を早く取ったこと」が悪いわけではない、という点です。問題は、その後の環境です。英語力を維持できるかどうかは、個人の努力以上に、「どんな環境に身を置いているか」に大きく左右されます。英語に触れる機会が日常的にあるか。周囲に英語を使う人がいるか。英語を使うことが“特別”ではなく“当たり前”になっているか。

学校選びの観点で言えば、「英語ができる生徒が多い環境」にいるかどうかは、想像以上に重要です。英語が得意な生徒が周りに多いと、英語は“できる人の特技”ではなく、“みんなが普通に使う道具”になります。授業のレベルも自然と高くなり、英語を使うことに心理的なハードルがなくなる。

逆に、周囲で英語を使う人がほとんどいない環境では、どれだけ小さい頃に英検を取っていても、英語は「やらなくていい科目」になりやすい。そうなれば、力が落ちるのは時間の問題です。

つまり、英語教育で本当に難しいのは、「最初に伸ばすこと」ではありません。伸びた力を、どうやって維持し続けるかです。

英検の級や早期取得そのものに価値がないわけではありません。ただ、それを「ゴール」にしてしまうと、その後の環境設計が疎かになりやすい。英語力を維持したいのであれば、どの学校に行くか、どんな集団に身を置くか、英語に日常的に触れる設計ができているか、そこまで含めて考える必要があります。

英語力は、才能でも肩書きでもありません。環境と習慣の積み重ねです。

だからこそ、これからの学校選びでは、「この学校で英語をどれだけ早く学べるか」だけでなく、「この学校で英語力を落とさずにいられるか」という視点が、ますます重要になっていくのだと思います。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)