量子コンピュータが私たちの未来を変える日は実はすぐそこまで来ている。
そんな今だからこそ、量子コンピュータについて知ることには大きな意味がある。単なる専門技術ではなく、これからの世界を理解し、自らの立場でどう関わるかを考えるための「新しい教養」だ。
『教養としての量子コンピュータ』では、最前線で研究を牽引する大阪大学教授の藤井啓祐氏が、物理学、情報科学、ビジネスの視点から、量子コンピュータをわかりやすく、かつ面白く伝えている。今回は量子コンピュータができることについて抜粋してお届けする。

【Google検索の仕組みもわかる】量子コンピュータって結局何ができるようになるの?Photo: Adobe Stock

量子コンピュータは何ができるのか

量子コンピュータは、量子力学的な性質を最大限活用することにより計算の仕組みを考え直して高速化を図る。

そのため、いま私たちがコンピュータを用いて行っているような、汎用的な処理が10倍早くなる、メモリーなどの記憶容量が増えるというものではない。

量子コンピュータは、特定の構造を持った問題に対して、量子ならではの計算手法を使い、従来のコンピュータでは何万年かけても解けないような問題の答えを見つけることを目指している。

そうした量子加速が得られる代表的な問題について、その仕組みを見ていこう。

ここでは、膨大なパターンの重ね合わせを支えるという量子の特徴を最も直接的に利用する「グローバーの量子探索アルゴリズム」を紹介する。

たとえば、N個のデータが入ったデータベースから、ある条件に合うデータを探す場面を考えてみよう。

インターネット検索のように、キーワードに合った情報を見つけ出す作業のイメージだ。

グーグル検索の仕組み

さて、このような状況に対して、古典コンピュータでは何回データベースにアクセスすればデータを見つけることができるだろうか?

グーグル検索では、グーグルの創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって開発された「ページランク」というウェブページの重要度を評価する手法を採用している。

インターネット上のページの順位づけを行い、その上位のページから優先的に探索を行うことで高速にウェブページを表示している。

一方で、このような構造を持たないデータベースに対して、データ一つを選んで目的のものかどうかを調べて検索する場合、データ数Nに対して比例するような質問回数が必要だ。

つまり、1万個のデータのなかから目的のものを見つけようとしたら、最悪の場合、1万回、平均でも5000回は質問が必要になるということだ。

グローバーの量子探索アルゴリズムでは、量子の重ね合わせという性質を利用して、全データを同時に扱うような状態を作り出せる。

この状態のなかで、条件に合ったデータに「目印」をつけ、その目印を干渉させることで、目的のデータの確率だけを徐々に高めていくことができるのだ。

この操作を何度か繰り返すと、最終的に目的のデータが高い確率で現れるようになる。驚くべきことに、その繰り返し回数はNの平方根程度で済むと知られている。

つまり、古典コンピュータでは最悪1万回の確認が必要だった検索が、量子コンピュータでは100回程度で見つかるというわけだ。

(本稿は『教養としての量子コンピュータ』から一部抜粋・編集したものです。)