英イースト・ミッドランズ空港で11月、中国から到着したワン・エアーの貨物便英イースト・ミッドランズ空港で11月、中国から到着したワン・エアーの貨物便 Photo: MARY TURNER FOR WSJ

【ロンドン】中国からの輸入品に対するドナルド・トランプ米大統領の取り締まりを受け、安価な製品の巨大な波が欧州に押し寄せている。その一部はシュエ・アールさんの裏庭に積み上げられている。

 2021年に上海から英国に移住した40代の専業主婦であるシュエさんは最近、中国の業者から送られた衣類やバッグ、小型家具を保管するため、約30平方メートルの倉庫を建てた。こうした業者の多くは米国市場以外に事業を拡大することに熱心だ。シュエさんは注文が入ると商品を梱包して発送し、納期を短縮している。好調なときは月3000~5000ポンド(約62万5000~105万円)を稼いでいる。

 彼女の「ファミリー倉庫」は、中国の貿易黒字を今年初めて1兆ドル(約156兆円)を超える水準に押し上げた影の物流ネットワークの重要な一部だ。新興の貨物航空会社は自らが「現代のシルクロード」と呼ぶ流通網を構築しており、中国の工場拠点と欧州の人口密集地を結んでいる。このような密集地では、中国系移民が自身の空き部屋に商品を保管することで報酬を得ている。

 中国の輸出を巡る方向転換は、トランプ氏の貿易戦争が世界貿易をどう再編したかを示す最も劇的な例の一つだ。中国は、同国を孤立させようとするトランプ氏の取り組みの裏をかいており、欧州と東南アジア向けの出荷は、米国向けの約20%の減少を補って余りある。

 中国税関当局のデータによると、総額1000億ドル規模の中国による低価格小包取引で、EUは今年、初めて米国を抜いて最大市場となった。