
トランプ関税契機に世界は「同じ道」たどるか?
自立と連携を選択、緩やかに「米国離れ」
第2次トランプ政権は立て続けに相互関税や鉄鋼、自動車などへの高率関税を導入するなど保護主義的姿勢を強め、世界では大きな混乱が生じている。各国との間で関税見直しなどの通商交渉が続いているが、対中国30%関税や一律10%関税、鉄鋼・自動車などの品目別関税に加え、株価下落や不確実性の上昇を織り込んだ前提で、トランプ関税による経済影響を試算したところ、世界経済は短期(今後1~2年程度)的に▲1.1%下押し効果が見込まれる(図表1)。
トランプ関税に対する各国の報復措置が今後実施されれば、悪影響はさらに拡大する。
1929年の世界恐慌を受けて自国産業保護のために米国はスムート・ホーリー法による高関税を導入した。これに対し、各国が報復措置をとったことでブロック経済化を招いた。結果として世界の貿易量は7割近く減少することとなった。
幸いにして、これまでのところ1930年代のような最悪のシナリオは回避されているが、当時と異なるのは、各国が過去の教訓を生かして報復を自制し、米国との二国間通商交渉による解決を模索していることに加え、「自立」と「連携」を選択していることだ。
米国が保護主義姿勢を強めるなかで、各国は経済的な自立を図り、地政学ショックに対する耐性を強化している。また、米国向け輸出が厳しくなる分、非米国間で連携強化・貿易活発化させようという動きも見られる。
トランプ関税に代表される米国の保護主義がもたらすものは、1930年代のようなブロック経済化ではなく、戦後の国際秩序の担い手だった米国の存在感の低下、つまり緩やかな「米国離れ」となる可能性が高い。
欧州やASEANなど米国との関係が親密な諸国でも「米国離れ」は起きているなか、安全保障を米国に依存する日本は難しい立場だ。