部下が相談を持ちかけたとき、5分しか話を聞いてくれない上司と、30分の時間をとってくれる上司がいるとすると、部下に信頼され、頼りにされるのは後者の上司になります。
シカゴ大学のウェンディ・レヴィンソンは、124名のお医者さんを対象に、実際の患者とのやりとりを録音させてもらい、その音声データを分析してみました。
レヴィンソンは患者から1度もクレームをつけられたことのないお医者さんと、2回以上、何らかのクレームをつけられたことのあるお医者さんにわけて診察時間を分析しました。すると、まったくクレームをつけられたことのないお医者さんの平均は18.3分だったのに、2回以上クレームをつけられたお医者さんのグループは15.0分という結果を得ました。
診察時間を長くとってくれて、患者の悩みをしっかり聞いてくれるお医者さんに対しては、患者も満足度が高くなりますし、クレームをつけたりはしません。病院に苦情の電話をかけたり、匿名で悪口の書き込みをしたりはしないのです。短い時間しか相談に乗ってくれないから人は不満を感じ、クレーマーになるのです。
レヴィンソンの研究を参考にすると、部下が悩みを相談したくなる上司の魔法の一言は、次のようになるでしょう。
「相談があるなら、何時間でも付き合ってやるぞ」
上司にこんな風に言われたら、部下は嬉しくなります。「頼りがいのある上司だ」と感じますし、上司のために頑張って仕事をしようという意欲も高まるでしょう。
しっかり悩みを聞いてもらうと、私たちは心がスッキリしますし、不思議なことに気づいたときには悩みが解決されてしまうことも少なくありません。上司が何かのアドバイスをしたわけでもないのに、じっくりと親身に話を聞いてもらっただけで悩みが晴れてしまうこともあるのです。
相談をしてからしばらく経った後に、「あの件は大丈夫だったの?」と上司に聞かれたりすると、部下のほうは、「あっ、そういえば忘れてました。そんなこともありましたね」とケロリとしていることはよくあります。







