ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ハーバード・メディカル・スクールの関連医療機関です)のマイケル・ドセットは、胃食道逆流症と診断された24名の患者について報告しています。お医者さんの診察を42分受けたグループは、18分しか受けないグループよりも、2倍も「症状が軽くなった」と答えたという結果が出ました。お医者さんの診察時間が長くなるだけで、不思議なことですが、治療効果も高くなってしまうのです。

 私たちは、自分の悩みを他の人に聞いてほしいのです。

 実効性のあるアドバイスがほしいわけではありません。

 ただしっかりと話を聞いてもらえるだけで、心はスッキリします。

 実際、悩み相談のプロであるカウンセラーやセラピストは、とにかく患者にたくさん話をさせるようにし、自分から「ああしろ、こうしろ」という指示を出したりはしません。患者にたくさん話をさせるようにすれば、患者は自分で悩みを解決し、自分の力で立ち直ってしまうものだからです。

 部下が浮かない顔をして悩みを抱えているように見えるのなら、「私で良ければ、何時間でも話を聞いてあげるから、とにかく話してみてくれないか」と声をかけてみましょう。部下も本当はだれかに話を聞いてもらいたいと思っているでしょうから、やさしい声をかけてくれた上司に感謝するはずです。

 最初はなかなか重い口を開いてくれないかもしれませんが、しばらく黙っていると部下のほうから何かしら話を始めるでしょう。そしていったん話を始めたら、すぐにアドバイスをしようとするのではなく、完全に聞き役に回って自分は沈黙していることが大切です。

【参考文献】

Dossett, M. L., Mu, L., Davis, R. B., Bell, I. R., Lembo, A. J., Kaptchuk, T. J., & Yeh, G. Y.  2015  Patient-provider interactions affect symptom in gastroesophageal reflux disease: A pilot randomized, double-blind, placebo-controlled trial.  PLOS ONE doi:10.1371/journal.pone.0136855.
Levinson, W., Roter, D. L., Mullooly, J. P., Dull, V. T., & Frankel, R. M.  1997  Physician-patient communication: The relationship with malpractice claims among primary care physicians and surgeons.  Journal of the American Medical Association ,277, 553-559.