したがって、「早寝、早起き、朝ごはん」に「早めの夕食」を加え、生体リズムの乱れが少ない生活を送ることが、がんに罹るリスクを低減すると言えるでしょう。

抗がん薬の有害作用を防ぐ
「時間治療」の効果とは

 がんを治療するために、臨床の現場ではさまざまな抗がん薬が用いられています。しかし、がん細胞には効くものの正常細胞も障害することが多く、その有害作用のためにしばしば投与が中止されます。

 未だに「抗がん薬は恐ろしい」とのイメージが強いのか、抗がん薬の使用をためらう患者さんも見かけます。

 こうした状況にあって、今は有害作用を防ぐためにさまざまな工夫がなされています。

 とくに、抗がん薬の時間治療(編集部注/体内時計のリズムや病気の症状が出やすい時間帯に合わせて薬の投与時間や治療のタイミングを最適化する治療法)では、効果は高く、かつ有害作用がなるべく出ないように考え、患者さんの体に優しい医療を提供することを目指し、研究が続けられています。

 たとえば、大腸がん、乳がん、胃がんなどの治療薬としてよく使われる「5-FU(5-フルオロウラシル)」という薬があります。

 5-FUは、体の中に入ると約80パーセントが「DPD」という酵素の働きによって分解され薬としての効果はなくなりますが、約1~3パーセントは分解されずに抗がん作用を発揮します。

 これまでの研究によって、正常組織ではDPD活性は日内リズムを示し、昼間に比べて夜間のほうが高いことが明らかになりました。このことから、5-FUは夜間に分解されやすく、血中濃度は低くなるものと思われます。

 実際に、5-FUを24時間にわたり一定速度で静脈内に持続注入すると、夜間の血中濃度が低いことが示されました。

 さらに注目すべきは、がん組織ではこのようなDPD活性に一定した日内リズムはなく、生体リズムが乱れている、あるいは生体リズムがない状態になっていると考えられることです。

 このような知見により、以下のことが推察されます。

(1) 正常組織では、5-FUに対する防御機構であるDPD活性は夜間のほうが高く、有害作用は少ない。
(2) がん組織では、DPD活性に一定した日内リズムはないため、がん組織における5-FU濃度に日内リズムはなく、5-FUの効果にも日内リズムはない。