がん治療の明暗を分ける新常識、抗がん剤や放射線を使う場合は「効く時間帯」がカギだった!写真はイメージです Photo:PIXTA

「時間治療」という言葉をご存じだろうか。各薬剤の性質や個々人の体内リズムを見極めて最適な治療時間を選べば、効果を最大限に引き出し副作用も軽減させることができるという。このような“オーダーメード医療”が実現すれば、治療の質が大きく向上するだろう。※本稿は、大塚邦明『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

「時間治療」が利用するのは
薬の効果が最大化する時間

 2019年、時間を考慮した治療として、新たに「サーカディアン医学」が提唱され、ゲノム(生物の全遺伝情報)、プロテオーム(生体内の全たんぱく質)、メタボローム(生体内の全代謝物質)の視点からその重要性が論じられるようになっています。

 ここで重要なことは、サーカディアンリズム(編集部注/生物に存在する約24時間周期のこと)だけに注目するのでは不十分であるということです。サーカディアンリズムは、12時間や7日など、その他の生体リズムと相互に影響を及ぼし合って、振幅(編集部注/波の振れ幅)と位相(波の形)が多様に変化するものだからです。

抗がん剤や放射線治療も
時間帯で効果に違いが出る

 食事などの生活治療にも、時間変調(クロノモデュレーション)効果があります。

 1日1食の生活を送ることで、インスリンとグルカゴンなど血糖を調節するホルモンの位相をシフトさせることができることが報告されています。そこで、食事時間を10~12時に限定する生活治療が試みられました。その結果、睡眠の質が向上して肥満が改善したこと、また、食事時間をさらに短く、昼間の8時間だけに限定する生活治療でも、わずか2週間で肥満が改善し、血圧も低くなったことが報告されています。

 がんの放射線治療にも、時間変調効果がみられます。

 口のまわりにがんができた患者さんの2年間の追跡調査で、生存率が最も高かったのは、がんの皮膚温がピークとなる時間帯に放射線を照射した患者群でした。肺がん患者でも同様で、深部体温を測定して、そのサーカディアンリズムの頂点位相に放射線を照射した患者群で、縮小率が最大(63%)となりました。他方、体温の頂点位相より4時間前、8時間前、12時間前に放射線を照射した患者群の縮小率は、それぞれ42%、40%、54%にとどまっていました。

 抗がん剤の投薬にも、サーカディアンリズムに依存した時間変調効果がみられることが明らかにされています。抗がん剤の副作用も同様です。