「もう上司の顔も見たくない…」。誰だって、そんな気持ちになったことがあるはずです。だけど、上司を選ぶことはできません。大切なのは、「変えることのできない現実」にどう対処するかということ。それによって、私たちの人生は大きく変わるのです。この記事では、野球界のレジェンドである松井秀喜さんのエピソードを紹介しながら、ビジネスにも通ずる「逆境への対処法」を明らかにします(この記事は、『超☆アスリート思考』(金沢景敏・著)を抜粋したものです)。
写真はイメージです Photo: Adobe Stock
自分にできることに集中する
「自分にコントロールできないことは、いっさい考えない。考えても仕方ないことだから。自分のできることに集中するだけです」
これは、元プロ野球選手である松井秀喜さんの有名な言葉です。
この言葉には、松井さんの野球人生を貫く、哲学のようなものが表現されているように感じます。
特に僕の印象に残っているのが、ニューヨーク・ヤンキースに移籍して4年目の2006年5月11日、レッドソックス戦の守備中に左手首骨折という大怪我をしたときのことです。
救急車で運ばれた松井さんはすぐに手術を受け、チームからの離脱が決定。この瞬間、巨人に入団した1993年の8月から、コツコツと積み重ねてきた連続試合出場は1768で止まってしまいました。
戦列を離れることへの忸怩たる思い、連続試合出場が途切れたことへの無念、野球ができなくなることへの不安……松井さんの胸中には複雑な思いがあふれたに違いありません。
しかし、松井さんは、そうした感情に飲み込まれませんでした。
骨折した事実は変えられない。だけど、未来の自分をコントロールすることはできる。それならば、いま置かれた状況を最大限に活かして、前に進むしかない。そうご自分に言い聞かせたのではないでしょうか。
骨折してから1ヶ月ほどが経ち、リハビリが始まるころには、「手首の骨折のおかげで、シーズン中に打撃改造するチャンスを得た。この機を逃す手はない」と考え、外角球をとらえてレフト方向に強い打球を飛ばすために、ややガニ股ぎみに構える打撃フォームへの修正に挑戦したのです。
そして、大怪我から約5ヶ月後――。
レギュラーシーズン終盤の9月12日にヤンキースタジアムで戦列復帰。5万2265人のファンのスタンディング・オベーションで迎え入れられた松井さんは、改造したガニ股気味のフォームでなんと5打数5安打の大活躍をしたのです。
「可変への集中」という人生のコツ
僕は、このエピソードが大好きです。
そして、この松井さんの思考法に大きな影響を受けてきました。
仕事や人生では、次々とさまざまな試練が訪れますが、それを乗り越えるためには、「コントロールできないものに気を病むのではなく、できることを精一杯やろう」(松井秀喜『不動心』新潮新書)というマインドセットが不可欠だと思のです。
僕は、このマインドセットを「可変への集中」と呼んでいます。
世の中には、自分の力ではコントロールできない「定数」と、自分の力でコントロールできる「変数」の二つの物事が存在します。大切なのは、この二つを正しく見極めること。そして、「定数」ではなく「変数」に意識を集中させること。つまり、「変えることが可能なこと」=「可変」に集中することなのです。
なぜなら、自分に与えられた「エネルギー」や「時間」などのリソースは有限だからです。その貴重なリソースを、変えることのできない「定数」に投入しても、何も生まれません。
それよりも、自分でコントロールすることができる「変数」に働きかけることに、なるべく多くのリソースを費やしたほうが建設的。それこそが、よりよく生きるための最良の戦略だと思うのです。
苦手な上司を「出世させたい」のはなぜか?
たとえば、「相性の悪い上司」問題もそうです。
“サラリーマンあるある”ですが、僕もTBS時代にすごく苦手な上司がいました。めちゃくちゃ仕事ができる方だからこそ、部下に厳しい。ガンガン指示が飛んできて、要求レベルが高い。最速のレスポンスが求められますし、ちょっとでもできていないことがあると容赦なく指摘される……。
正直、ほんとに苦手でした。



