その上司の顔を見るのも怖い……。毎日、会社に行くのがイヤで仕方なくて、いつも「はやく上司が替わらないかなぁ」「ほかの部署に異動にならないかなぁ」などと願っていました。

 だけど、そうやってイヤイヤ働いている自分にも、だんだん嫌気がさしてきます。

 そんな愚痴を妻に漏らしたら、「何言ってるの? すごい仕事のできる方なんでしょ? あなたがその方のことを好きになるしかないでしょ?」と諭されたこともあって、こんなふうに考えるようになりました。サラリーマンは上司を選べない。そして、他人を変えることはできない。つまり、部下にとって上司という存在は、変えることのできない「定数」なんだから、あきらめるしかない。

 じゃ、「変数」は何だ?

 自分です。自分のことは変えられる。

 だから、僕は、自分の考え方を180度変えることにしました。「可変への集中」です。自分の考え方を変えて、「この上司を出世させよう」「この上司をむしろ好きになろう」と思ったのです。

 もちろん、そこには打算があります。上司が出世をすれば、自分も引き上げてもらえるはず。その上司のことは相変わらず苦手なままでしたが、そんな邪念を胸に、上司の仕事を全力でサポートすることにしたのです。

「他人」を変えることはできないが、「関係性」を変えることはできる

 そうしたら、面白いことが起きました。

 その上司の厳しさは変わりません。相変わらず怖い。だけど、だんだん僕のことを頼りにしてくれるようになったのです。

 判断に迷うことがあれば、僕の意見を聞いてくれるようになったし、大事な会議やミーティングには、僕を同席させるようにもなりました。そうなると、なんとなくこちらも、その上司のことが好きになってくる。

 気がついたら、僕と上司は、仕事のパートナーとして、すごくうまく機能するようになっていました。そして、上司の出世に伴い、僕も昇進。僕の打算は現実のものとなったのです。

 世の中って、面白いですよね?

 最後まで上司のスタイルは変わりませんでしたから、やっぱり、上司は「定数」なのです。だから、もしもあのとき、僕が上司を変えようなどとしていたら、きっとトラブルになっただろうし、まず間違いなく僕は潰されたでしょう。

 ところが、「変数」である自分を変えることによって、上司そのものは変わりませんでしたが、僕と上司の「関係性」は劇的に変化。その結果、かつてはあれほど苦手だった上司のことがむしろ好きになり、その上司と取り組む仕事自体はハードでしたが、とても前向きに取り組むことができるようになったのです。

「定数」と「変数」――。この二つを正しく見極めて、「可変に集中」する。これこそ、人生を変える最良の戦略なのです。

(この記事は、『超⭐︎アスリート思考』の一部を抜粋・編集したものです)

金沢景敏(かなざわ・あきとし)
AthReebo株式会社代表取締役、元プルデンシャル生命保険株式会社トップ営業マン
1979年大阪府出身。京都大学でアメリカンフットボール部で活躍し、卒業後はTBSに入社。世界陸上やオリンピック中継、格闘技中継などのディレクターを経験した後、編成としてスポーツを担当。しかし、テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じ、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命に転職した。
プルデンシャル生命保険に転職後、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRTの6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な数字をつくった。2020年10月、AthReebo(アスリーボ)株式会社を起業。レジェンドアスリートと共に未来のアスリートを応援する社会貢献プロジェクト AthTAG(アスタッグ)を稼働。世界を目指すアスリートに活動応援費を届けるAthTAG GENKIDAMA AWARDも主催。2024年度は活動応援費総額1000万円を世界に挑むアスリートに届けている。著書に、『超★営業思考』『影響力の魔法』(ともにダイヤモンド社)がある。