でも、生きる喜びや幸福もまた、対人関係の中でしか得られません。だから、苦しいけれど頑張って生きていこうという勇気を持つためには、自分に価値があると思えないといけません。

人は叱られると
自分を卑下してしまう

 でも、私たちは、自分に価値があると思えないような働きかけをたくさん受けて育ってきました。

 例えば、目の前にいる人に叱られるとどうなるでしょうか。叱られて自分に価値があると思える人はいません。お前はこんなこともできないのかと上司から叱られて、よし頑張るぞ、次はいい成績を出すぞと思える部下はいません。

 自分はダメなんだ、自分は仕事の能力がないと思ってしまいます。そう思ってしまうと、自分に価値があると思えなくなり、ひいては、仕事に取り組む勇気も、さらに生きる勇気もなくしてしまいます。

 ですから、まずできることは、相手にそのような言葉をかけないということです。

 例えば、親の立場でいうと、子どもを叱ってはいけないし、上司の立場の人は部下を叱ってはいけないのです。叱らないだけでも、相手は生きる勇気を持てるようになります。

 自分のことを決して理想からの引き算で見ないで、現実を受け入れてくれている人だと相手が思ったら、その相手は自分を受け入れるところから出発していこうと思えます。

 現実の自分から出発して、次にできることを考えていこうと考えられる勇気を持てる援助ができると思います。人生の中で困難な課題に直面した時に、そこから決して逃げないで、その困難に対面する、取り組む勇気を持てる援助をする。

 そういうことをアドラーは「勇気づけ」といっています。

期待に答えられなくても
生きてるだけで素晴らしい

 とはいえ、相手が、例えば子どもが、親の神経を逆撫でするようなことばかりしたりいったりする。あるいは、少しも成績が伸びない。だから一日中勇気を与える援助などできないという人が多いです。

 でも、子どもがどんなに自分の理想と違っても、とにもかくにも生きていることがありがたいと思ってほしいのです。そこに注目すれば声をかけることができます。