子どもを厳しくしつければ、品行方正な子どもに育つはず。そう考える親は多いだろう。だが、厳しくしつけられた子どもは学校の人気者にはなれないかもしれない。親の言動が子ども同士の人間関係にどう作用するのか。ビジネス心理学の専門家が最新研究をもとに子育ての新事実を紹介する。※本稿は、内藤誼人氏『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。
家庭で自分がされているように
子どもはクラスメートに接する
親がどんな育て方をするかによって、子どもが学校で人気者になれるのか、なれないのかが決まってしまいます。
そう聞けば、おそらく読者のみなさんはビックリされるのではないかと思います。
けれども、これはれっきとした事実です。子どもは、ほかの人とどのように付き合えばよいのかを、親との付き合いによって学んでいきます。子どもにとって、親はとても重要な「見本」(モデル)なのです。親が子どもに対してものすごく厳しく、批判的な態度で接していると、その子どもは、親が自分にするのと同じようなやり方で、クラスメートと接するようになってしまいます。そのため、ものすごく嫌われる子どもになっていくのです。
逆に、親が子どもに対して絶えず笑顔を見せ、楽しいことを口にし、子どもが嬉しくなるような言葉かけをしていれば、その子どもは学校でほかの子どもに同じことをしてあげるようになります。したがって、そういう子どもはクラスでの人気も高くなるのです。
オランダにあるナイメーヘン・ラドバウド大学のマジャ・デコヴィックは、112人の小学生と、その両親を対象にした研究をしています。
まずデコヴィックは、クラスメートで最も好きな人の名前を3人挙げてもらいました。また、嫌いな子どもの名前もこっそりと3人挙げてもらいました。
それらを集計して、子どものクラスでの人気度を調べました。次にデコヴィックは、各家庭を訪れて、子どもと親の共同でパズルをやってもらいました。このパズルは7つのピースを組み合わせて図形を作るものですが、子どもにとっては難しい作業なので、親も手伝ってよいことになっていました。ただし、親は子どもに声をかけることは許されていますが、自分で触ってはいけません。パズルを触れるのは、子どもだけです。
このとき、親が子どもに「そうじゃないって言ってるだろう!」と厳しい声をかけたり、険しい表情を見せたりしたときには、「厳しい親」としました。逆に、やさしい笑顔で微笑みかけたり、子どもを笑わせるようなことを言ったりする親を、「受容的な親」としました。