100歳の老人は世界をどう見ている?心理学者が「幸せですか」と聞いた驚くべき結果とは100歳の人は機能の低下によってすでに行動に多くの制限があり、視力が落ちて耳も遠い人が多く、しかも家族や親しい友人の死も多く経験しているが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

死別や孤独、認知症などで介護を必要とするなど、長生きにはマイナスイメージがつきまとう。日本を含む6カ国を対象にしたある調査では、「100歳まで生きたい」と答えた日本人の割合はわずか1割と最低、もっとも多いのは「80歳」という結果が出た。25年後には100歳以上が50万人を突破するともいわれる超長寿国ニッポン。これまで500人以上の百寿者に会い、調査・研究を続けてきた大阪大学教授で老年心理学者の権藤恭之さんがこのたび『100歳は世界をどう見ているのか』を刊行。今回は本書の中から、「できることが減っても幸せな人生」の在り方を説く。

年齢を証明できるのは書類だけ

 生物が生まれてからどれだけの時間が経過しているのかを、記録や他者の記憶によらず、その生物そのものだけを情報源として正確に知る方法は今のところありません。樹木であれば年輪が刻まれているので、それを数えることで樹齢何千年でも確認することができます。人間のしわは年輪にたとえられますが、しわは年輪のように時間経過を正確に刻むものではありません。

 以前、世界の長寿地域が話題になったことを覚えている方もいるでしょう。長寿地域のひとつにペルーの山岳地帯が挙げられていました。その地域で生活している人は年を取っているのにとても元気だというのです。しかし、研究者が実際に現地で調査をした結果、年を取って見えるのは強い紫外線に当たっているからで、実際の年齢は見た目の年齢よりもずっと若かったと報告されています。

 ある研究では、若い人にだいたい83歳前後の人たちの顔写真を見て年齢を予測してもらったところ、予測された年齢は64歳から85歳と大きく開きがありました。また、その見た目年齢は、実際の年齢よりもその後の死亡までの期間と関係が強かったとのことです。実際の年齢よりも見た目に生物学的な年齢が現れるというのは、老化現象の不思議な点ですね。生物学的な老化に関しては、白髪が増えるとか筋力が低下するといった具合に変化が起きることはわかっていても、どうして起きるのかという根本的なことに対する答えはないようです。