海老マヨネーズはというと、平成になってから全国の中華屋が店に置くようになったが、こちらのそれは海老は薄衣をサクサクに揚げてあり、これにあっさりめのマヨネーズがからめてある。パンチはある。

 一噛み目には、マヨネーズのコクと酸味がふわりと広がり、そこへ、ちょうどいい熱の入り方で旨さ甘さがひきだされた海老が顔を出す。歯触りのいい衣がリズムをあたえ愉快。しっかりした味付けだがクドくないから日本酒にもいける。中華屋さんが勉強に来るべき出来である。

 アジフライも立派なアジに衣は薄め。サクサクの下のフワフワ身ほどけいいアジが、あくまで軽く腹におさまっていく。店に来て、ビールは一杯で終えて、とうに日本酒にうつっていたのだが、ここへきてビールをチェイサーと称して注文したのは、ひとえにアジフライのせいである。罪だ。

 鮨は、「え?ここお鮨屋さんだったんですね」という完成度。酢飯の味も実にバランスよく、これだけ食べに来る人もいるのではないだろうか。

 握りではなくツマミの玉子焼きは、甘めに仕上げてあった。

 なぜだろう、甘い玉子焼きを食べると、全身がノスタルジーにつつまれ、この頃は、うっかりすると涙が出るのである。この日も、その玉子焼きをいただいたら、どういうわけか学生時代のアレコレが胸に去来し落涙しかけた。甘い玉子焼きにはみなさまも努努(ゆめゆめ)注意されたし。

 そして、いや、まいったなあ、というのが牛肉握りであった。文字通りの牛肉の握り鮨なのだけれど、肉のサシも包丁の入れ方も素晴らしく歯触りと口どけは最高。こういう変わり種は「酢飯に肉がのっている」だけで鮨になっていないものにも時々出くわすが、ここのは全然違う。

 それどころか、酢飯との相性というか、変わり種なのに、その「鮨度」は「こんなに牛肉みたいな美味しいお魚いたのか!」と思わせるくらいに、鮨としての旨さがある。本当はシメにするはずだったのに、これが旨すぎて、追い酒してしまった……。