私たちは以前、4時間ほど軽い自転車漕ぎで運動負荷をかけてから疲労を計測してみるという実験を行いました。すると、疲労感はかなり高くなったにもかかわらず、筋肉はとくにダメージを受けておらず、肝機能などにもほとんど影響がなかったのです。
自転車漕ぎを始めると、体温が上がって呼吸が速くなり、心拍数がどんどん上がります。このとき、脳では酸素の需要が一気に高まっている状態。そのため自律神経は、体のあらゆる器官に対して「もっと脳に酸素を送れ!」「汗をかかせて深部体温を下げろ!」という指示を出し、脳の状態を保つためにフル稼働しています。
運動負荷が強くなるほど指令は複雑化し、自律神経はどんどん疲弊していく羽目に。そこで脳はこれ以上、自律神経が疲れてしまわないように、「“体”が疲れているよ」という誤情報を発し、脳全体でその情報を共有します。
この情報を受けて、「ああ、疲れた……」と感じているのが「疲れの正体」。自律神経の酷使を回避するために、「休みたい」という欲求を芽生えさせているのです。
江戸時代の商いにたとえると、脳が「店の主」、なら、自律神経中枢は、店が上手くいくように仕入れ、販売、丁稚の指導までいっさいがっさいを取り仕切る「番頭さん」、そして内臓などの各器官が、その指示に従って忠実に働く「丁稚」……というイメージでしょうか。
人間はもちろん、動物にとっては脳が「主」であり、それ以外の体は脳を守るための「ツール」に過ぎません。肺は酸素を取り入れる部品であり、消化管は栄養を吸収する部品。心臓はそれらを脳に運ぶポンプであり、血管はその輸送路なのです。
そして、脳を万全な状態に維持できるように、その部品の1つひとつに休みなく的確な指示を出し続けているのが自律神経中枢です。そんな自律神経の過酷な状況を想像すると、「いたわらなければ」という気持ちが生まれてきませんか?
夏バテや人間関係疲れも
自律神経の酷使が原因
ボクシングなど、筋肉を痛めつけるような激しい運動をするとさすがに体も疲れてしまいますが、ライフワークとして行うような軽めの運動では、筋肉はほぼノーダメージ。実際に疲れているのは、脳にある自律神経の中枢です。







