懇意の作業長に社長を任せ、会長となって新しい事業を始めた。21年4月から月1回、マルシェをカフェなどで開いている。お菓子や手作りアクセサリーを売って好評で、お客は100人を超す。
美容部門もスタート。ネイルや脱毛のサロンを年明けにも開く。その準備で休む間もないほど忙しい。
「せわしなくして、夫のことを考える隙をなくそうとしているんですね」
亡くなって2年。気持ちのキツさが薄らぐことはなく、不眠が続く。雨の日は気がふさぎ、日がな泣いてしまう。それでも、4人の子どもたちと生きていかなくては。
19年の葬儀で子ども代表として長男大河さん(21)は、参列者500人を前に手紙をしっかり読み上げた。
『喪の旅 愛しい人に出会い直す』(河合真美江、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
〈優しくて大好きな親父の背中を見ることができてすごく幸せでした。これからはおれが親父のかわりに母さん、きょうだいを守っていけるよう努力するから、おれにまかせてゆっくり休んでください〉
大河さんはイラストを学びたいと家を離れ、いまは福岡の専門学校に通う。子どもたちは大きくなっていく。それを夫と見守れないのが悔しい。
でも、と亜由美さんは考える。生まれてきた意味がある。死んでいく意味もある。夫は使命を全うして逝ったんだなと。出会うべくして出会い、夫に様々なものを与えられた。今度は私が何を与え、どう命を全うするか。
夜には、空を見上げて1日の報告をする。そして、空に向かって叫ぶ。
「パパありがとう。今日も愛してるよ」
ああ、夫が亡くなった秋のにおいがする。







