死後の手続き お金の準備#11Photo:takasuu/gettyimages

夫や妻に突然先立たれ、別れを惜しむ。しかし喪失感に浸っている暇はない。葬儀代など多額のお金がかかる行事がある。一方、パートナーの死後の慌ただしさの中で忘れがちなのが申請すればもらえるお金だ。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#11では、死後の支出と収入を徹底解説する。(ダイヤモンド編集部 羽富宏文)

葬儀代に390万円!
カードローンは負の相続財産に

「父の死に対して動揺したり悲しんだりする暇もなく、ただひたすら調整していたという記憶しかありません」

 こう話すのは東京都内に住む松本泰司さん(54歳・仮名)だ。父親を自宅で亡くし、慌ただしく葬儀を執り行った。配偶者である母親は父親の死にショックを受けて精神が不安定になり、仕事が忙しい中で自らが調整役にならざるを得なかったという。

 松本さんの父親の葬儀にかかった費用は、しめて393万1325円。参列者も多かったため、かなり広い会場を使ったという。

「父は生前に葬儀費用を積み立てていなかったので私と弟で半分ずつ負担しました。突然の葬儀代は思った以上にかかり、事前の蓄えの大切さを痛感しました」(松本さん)

 パートナーを亡くすと、葬儀代はもちろん、他にもさまざまな費用がかかってくる。故人が払う予定だったお金の存在に気を付けないと、後から思わぬ請求に苦労する羽目になる。

 例えば所得税は全ての人が対象ではないものの、亡くなった人が事業経営や不動産による賃貸収入がある場合には、死後4カ月以内に税務署に準確定申告をしなければならない。

 カードローンなどが未返済のまま亡くなった場合は、相続人にローン返済が引き継がれる。いわゆる“負の相続財産”である。

 パートナーを亡くした後、慌ただしく続く死後の手続き。思わぬ多額の出費で暗たんたる気持ちになる中で、見落としがちなのは所定の手続きを踏めばもらえるお金だ。

 申請を忘れて後悔しないためにも、ぜひ押さえておきたい。