決め台詞「絶好調」の裏にあった知られざる苦労
書籍『日本一強いヤオコーを創るために母がくれた50の言葉』(川野幸夫著、産経新聞出版)によると、中畑氏の明るさについて「本人がかなり努力している」と家族が語っていたという。結果がすべての世界で、自分自身を鼓舞するために、あえて明るさを演出していたのだ。
川野氏は同書の中で、中畑氏の知られざる内面と、ある「自己暗示」の習慣について次のように引用し、紹介している。
《巨人軍の藤田元司元監督(故人)も中畑さんのことを、「明るく気さくな男だが、それは見える部分だけの話で、彼がスランプになったとき、体中にジンマシンができたことを知り、それ以来私は彼に対する見方を変えた。表面に出ているのは本当の中畑ではなくて、実はもっと神経質でこだわり、考えて、その後で明るく転換していく。だからスランプのときでも、ベンチでは大きな声を張りあげて、人も自分も気持ち良くしようと努力している」と話しています》
《私が感心いたしますのは、じゃあ中畑さんが声を張りあげる、明るいだけの男なのかというとそうではないのです》
《ある日、当時の長嶋茂雄監督は、「毎朝起きたら、“オレは2割8分以上打てるバッターなのだ”と必ず叫ぶのだ」と、アドバイスしたそうです。それ以来毎日、大声で長嶋監督直伝の自己暗示法をはじめたのだそうです。その結果、通算打率2割9分という成績を残したのです》
なんと、あの有名な決め台詞「絶好調」の裏には、スランプで体に不調をきたすほど悩み抜く繊細な神経があったのだ。そして、自分は打てるバッターなのだと毎朝叫ぶことで、自分自身をマインドコントロールしていたのである。
これは単なる精神論ではない。自分の発する言葉によって思考と行動を変え、現実の結果(打率2割9分)を引き寄せた成功事例といえる。
こうした「自分自身への語りかけ」は、心理学の分野では「セルフトーク(Self-Talk)」と呼ばれ、その効果について科学的な検証が進んでいる。言葉に出す、あるいは頭の中で唱える言葉が、パフォーマンスにどのような影響を与えるのか、多数の研究結果を体系的に分析した論文が存在する。







