自分を鼓舞する言葉は、科学的にもパフォーマンス向上に役立つ

 デビッド・トッド氏らが2011年に発表した『セルフトークの効果:システマティック・レビュー』である。この研究では、スポーツ心理学の文献を精査し、セルフトークが運動能力や心理状態に及ぼす影響を包括的に調査している。

 同論文の結論部分は、ビジネスパーソンにとっても示唆に富んでいる。

《合計47の研究が分析された。その結果、ポジティブなセルフトーク、インストラクショナル(指示的)なセルフトーク、そしてモチベーショナル(動機づけ)なセルフトークは、パフォーマンスに対して有益な効果をもたらすことが示された。

 やや驚くべきことに、一般的な見解に対する証拠に基づいた2つの反証が浮かび上がった。第1に、ネガティブなセルフトークは必ずしもパフォーマンスを阻害しなかった。第2に、課題の特性に基づいたインストラクショナルなセルフトークとモチベーショナルなセルフトークの効果の違いについては、一貫した証拠が得られなかった。

 媒介分析の結果からは、認知的要因および行動的要因がセルフトークと最も一貫した関係を持っていることが示された》


 つまり、中畑氏が行っていたような「自分は打てる」というポジティブな言葉や、あるいは技術的な指示を自分に出すことは、科学的にもパフォーマンス向上に役立つことが証明されているのだ。

 さらに興味深いのは、「ネガティブな言葉」が必ずしも悪影響を与えるわけではないという点である。たとえ弱気な言葉が浮かんだとしても、それを無理に消そうとする必要はないのかもしれない。

 重要なのは、目的を持って自分に言葉を投げかける行為そのものなのだ。

 さて、ここから視点を私たちを取り巻く競争環境と、個人のあり方へと広げてみたい。

「誰かが何とかしてくれる」と待っているだけの姿勢からは、力強いイノベーションも、中畑氏のような突き抜けた成果も生まれない。競争社会においては、最終的に頼りになるのは自分自身のマインドセット(心の持ちよう)だけである。

 外部環境が厳しい時こそ、中畑氏の実践が参考になる。