次期戦闘機のイメージ画像次期戦闘機のイメージ画像(防衛省提供)

日本、イギリス、イタリアの3カ国で共同開発している次期戦闘機の最重要機器とされる「ミッションコンピューター」を、イタリアの防衛装備品メーカーのレオナルドが担う方向で調整が進んでいることが、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。三菱電機も同機器の開発で主導的な立ち位置を目指していたが、及ばなかったもようだ。日本の需要に沿った形で次期戦闘機を運用できるかどうかが今後の焦点となる。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

戦闘機のコア技術の開発は
日本と三菱電機の悲願だったが…

 今月15日に来日したイタリアのメローニ首相と高市早苗首相は、次期戦闘機の共同開発に代表される安全保障協力や、重要鉱物の供給網拡大など経済安全保障での連携強化を確認した。

 だが、次期戦闘機の設計の現場では、日本とイギリス、イタリアが、開発のキャスティングボートを握るための主導権争いを演じている。その中で、イタリアの防衛装備メーカーが、戦闘機の最重要機器とされる「ミッションコンピューター」を担う方向で調整が進んでいることが分かった。

 2035年の配備を目指している次期戦闘機は、「第6世代」と位置付けられている。パイロットが乗り込む有人機は、無人機や艦艇、衛星など周辺システムと連携して運用することが想定されている。

 そこで、これまで以上に重要性が増しているのが電子機器(アビオニクス)の分野だ。AI(人工知能)を活用した指揮、統制も求められる。

 次期戦闘機は、機体、航空エンジン、アビオニクスの3つの領域ごとに、各国の企業が共同企業体(JV)やコンソーシアムを組んで開発を進めている。アビオニクスでは三菱電機、イタリアのレオナルドなど4社がコンソーシアムを組み、イギリスを拠点に活動するとしている。

 ハードウエア全般を取り巻く環境も目まぐるしく変わっている。次期戦闘機では、ハードの性能をソフトウエアで定義するソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の概念も導入される見通しだ。

 自動車と同じように、機体そのものではなく、ソフトの更新で性能向上を図ることになると予想されている。ソフトの相対的な重要性が高まる傾向は自動車だけでなく戦闘機でも生じているのだ。

 こうした事情から、次期戦闘機では、戦闘機の“頭脳”とも呼ばれるミッションコンピューターの重要性がさらに高まる。ミッションコンピューターは、レーダーやセンサーから取得する膨大なデータを処理して攻撃目標をロックオンするなど、任務を遂行する作業を取り仕切る。

 アビオニクス開発のコンソーシアムに参加している三菱電機は、ミッションコンピューターの開発で主導的な立ち位置を担おうとしていた。三菱電機はレーダーに強みがあり、2000年から運用されている現行の戦闘機である「F2」では、ミッションコンピューターやレーダーを手掛けている。

 日本には、戦闘機の開発で主導権を握れずに苦労してきた歴史がある。F2は自国での開発を目指したものの、貿易摩擦などの事情もあって米国との共同開発に持ち込まれた。機体のベースは米国製の戦闘機となり、米国側は飛行を制御する「フライト・コントロール・システム」のコア技術を開示しなかった。一方で日本側はレーダーや複合材の技術の開示を迫られ、米国側に有利な条件となった。

 現在、航空自衛隊の戦闘機にはF2のほかに、米国から購入している「F35」と「F15」がある。先端技術の塊である戦闘機を自国で開発する技術力を持つことは安全保障上、「国力」そのものといって過言ではない。米国の兵器への過度な依存を食い止めることにもつながる。

 F2の研究開発が行われていた約40年前の苦い記憶があるだけに、日本は次期戦闘機で、コア技術の「自国主導」を目指していたのだ。

 ところが、である。最重要機器と目されるミッションコンピューターの開発をレオナルドが担当する方向で調整が進んでいるという。

 次ページでは、レオナルドが開発を担う理由と、三菱電機が劣後したポイントを明らかにする。さらに、日本と欧州の安全保障環境の違いが戦闘機の運用にどう影響するのかも詳述する。次期戦闘機を、日本の需要に合ったものにするためにはどんな課題があるのだろうか。