激しい内戦が勃発してから23年後の2013年7月1日、クロアチアがEU加盟を果たした。同国の経済を支えているのは観光業だ。周辺国のみならず日本からも多くの観光客が訪れ、人気の渡航先として知られている。しかし、観光業の他には目立った産業が育っておらず、国内の観光とは縁のない都市では失業者が目立つ。その上、多くの国民の心には戦争の傷が深く刻まれており、完全な民族の融和からはほど遠い。そんなクロアチアはこの数年経済危機に大きく揺さぶられるEUに加盟し、どうメリットを享受するのか。現地取材を敢行し、同国内外から聞こえてくる希望や不安の声から、経済成長のカギが何なのかを考えてみたい。(取材・文/ジャーナリスト 仲野博文)

少数派の“加盟肯定派”

クロアチアで観光客に最も人気のある町ドゥブロブニク。観光立国クロアチアから、第二、第三のドゥブロブニクは生まれるのだろうか? Photo by Hirofumi Nakano

 クロアチアは九州の約1.5倍の土地に430万人が暮らす小さな国で、1991年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国から独立した。一方的に独立を宣言した結果、セルビアを主体としたユーゴスラビア連邦と戦争状態に入り、独立戦争は95年まで続いた。

「最近では高層ビルも建てられ、ブランドショップの数も増え、ザグレブの街並みも変わりはじめましたね。もともと独立戦争前はユーゴスラビアで最もリベラルな町の1つで、70年代や80年代はボヘミア二ズムを市民が謳歌しており、共産主義国家の都市とは思えないような雰囲気がありました。最近の町の変化にはどこか商業的な印象を抱いてしまいますが、これも時代の流れなのでしょうか」

 そう語るのはザグレブ市内の美術館に学芸員として勤務するレイラ・メフリッチさん。ジャーナリストとしても活動するメフリッチさんは、ザグレブの発展は非常にうれしいことと前置きしたうえで、EU加盟と自国の経済的な体力はバランスが取れているのかについて、懐疑的な見方を示す。

「必要以上に経済成長を追求しすぎて、(金融危機に見舞われた)スロベニアのようにならないかが心配なのです」

 クロアチア国民はEU加盟についてどう考えているのだろうか?