税務署が絶対許さない「学費名目の振込」、そのNGポイントは?
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。

税務署が絶対許さない「学費名目の振込」、そのNGポイントは?Photo: Adobe Stock

税務署が絶対許さない「学費名目の振込」とは?

 本日は「贈与と税務署」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。

贈与と扶養の違い、わかりますか?

 税務署から「これは贈与ですか、それとも扶養ですか」と聞かれることがありますが、まず押さえておきたい前提は、扶養と贈与は並列の別物ではない、ということです。

 お金や財産をあげる行為自体は贈与で、その贈与の中に「扶養義務の履行として、生活費や教育費に充てるために渡すお金」が含まれていて、一定の条件を満たす限り贈与税がかからない扱いになる、という整理です。つまり論点は「贈与か扶養か」ではなく、「贈与のうち、扶養として“贈与税がかからないもの”に当たるかどうか」にあります。

 線引きの見られ方は、大きく二つの観点に分かれます。ひとつは“関係性”で、そもそも扶養義務者の間の支出なのかどうかです。基本は、配偶者、直系血族(親子・祖父母と孫など)、兄弟姉妹といった範囲で、さらに家庭裁判所の審判で扶養義務者となる場合もあります。ここに入らない関係、たとえば甥や姪は、自然体のままだと扶養義務者に当たらない、という理解になります。

「学費名目の振込」、NGポイントは?

 もうひとつが“使い方(実態)”で、これが調査の場面ではいちばん現実的に見られやすいポイントです。生活費・教育費として贈与税がかからないのは、「通常必要と認められる範囲」で、しかも「必要な都度、直接その費用に充てるために渡されたもの」に限られます。言い換えると、生活費・教育費の名目で受け取ったのに、預金として貯めたり、株式・投資信託・不動産などの購入資金に回してしまうと、その部分は扶養の履行とは見られず、贈与税の対象になり得る、ということです。

 だから「税務署対策」として最強なのは、小手先の名目づくりではなく、渡す側・受け取る側の説明が、実際の資金の動きと一致している状態を作ることです。扶養として扱いたいなら、生活費や教育費として渡し、生活費や教育費として使い切る。逆に、使い切らずに貯まっていく、運用商品に化ける、別目的に回る、といったズレが出ると、線引きは一気に不利になります。ここは「生活費・教育費として必要な都度、直接充てたと言えるか」という実態のほうが重要です。

 もちろん個別事情で判断が揺れることはありますが、結局のところ見られるのは、関係性が扶養義務者の範囲に入っているか、そして渡したお金が生活費・教育費として“その都度”使われているか、この二点です。ここを外さずに整理しておけば、「贈与」と「扶養」の線引きで変に不安を抱え込まずに済むはずです。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)