日本とイタリアで“ゾンビ企業”が増えたのはなぜか?多数行取引が助長した銀行による「追い貸し」の悪影響写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

戦後経済を支えた中小企業の役割と限界

 イタリアの中小企業は、欧州諸国の中でも複数の銀行と取引する傾向が強く、研究対象として注目されてきた。そのため、銀行取引数に関する英語論文の多くがイタリアの事例を取り上げている。これらの論文によると、イタリアの中小企業の平均的な取引銀行数は5~10行と極めて多い(図表)。今回は、多数行取引が主流のイタリアと日本を対象に、戦後の経済動向と中小企業の役割を概観し、両国において長年問題視されるゾンビ企業について考察する。両国の多数行取引は、ゾンビ企業の存続に一役買っている可能性が高い。

 イタリアと日本は、共に第2次世界大戦の敗戦国であり、戦後直後は深刻な経済的困難に直面していた。1950~60年代、イタリア経済は急速に復興し、その過程で中小企業が積極的に評価された。家族経営の中小企業が迅速に設備投資を行ったことが、経済の拡大を後押ししたとされる。日本でも80年代以前は、中小企業が大企業に先んじて設備投資を実行した。大企業だと難しい迅速な意思決定が可能なためで、このことが経済成長を支えた。