説明が下手な人は、この小さなコップに、バケツいっぱいの水を一気に注ぎ込もうとします。当然、水はあふれ出し、床は水びたし。結局、相手の手元には一滴の水も残りません。

 一方、説明がうまい人は、相手のコップの大きさを正確に見極めています。そして、そこに入るだけの最も純度の高い「本質」という名の水一滴を、そっと注ぎ入れるのです。

 では、どうやって情報を削ぎ落とし、その「一滴」を作ればいいのか。説明の達人が無意識に使っている「情報カットの3つの技術」を紹介します。

相手のコップから水を溢れさせない「3つの引き算」

(1)「抜粋」:最も重要な一部分だけを切り出す

 抜粋とは、全体の中から、「これだけは絶対に伝えなければ死ぬ」という核心部分だけを切り取る技術です。

 例えば、30ページの報告書を説明する際、1ページ目から順に話すのは「足し算」の発想です。「抜粋」を使うとこうなります。

「報告したいことは山ほどありますが、今日お伝えしたい結論はたった一つ。『来月からA社との契約を見直すべきだ』ということです」

(2)「要約」:全体像をギュッと圧縮する

 要約はその名の通り、「要するに」「一言で言うと」などの枕詞を使って、全体像を保ったままサイズを小さくする技術です。映画のあらすじをダラダラ話すのではなく、「一言で言うと、『自分の運命にたった一人で立ち向かう男の物語』だよ」とまとめるイメージです。

(3)「抽象化」:具体を一つ上の概念でまとめる

 バラバラの具体的な手順を、共通のルールで括る技術です。先ほどの後輩への業務説明なら、こうなります。

「色々あって大変だと思うけど、今日覚えてほしいルールはたった一つ。『企画書は必ずBフォルダのフォーマットを使う』。まずはこれだけ守ってくれれば、あとは全部間違えても大丈夫だから」

 これなら、後輩の小さなコップからも水はあふれません。「まずはこれをやればいいんだ」と安心して第一歩を踏み出せるはずです。