「マネージャーの要件」は
数千年前から決まっている

 実は、「人の上に立つべき人間」の要件というのは、古今東西を問わず、歴史的に答えが出ていると言っても過言ではありません。

 例えば、論語には「徳をもって政治を行えば、北極星がその場に留まっているだけで、他の星々が自然に周りを回るように、人々が自ずと従う」という言葉があり、徳のある人が人の上に立つべきだという思想を説いています。【爲政以德、譬如北辰居其所、而衆星共之=政(まつりごと)を為なすに徳を以てするは、譬(たとえ)ば北辰の其の所に居て、衆星の之に共(むか)うが如し】

 西郷隆盛は、中国の古典『書経』やその注から学び、「徳のある人には高い役職(位)を与えなさい。功績のある人には高い報奨を与えなさい(徳者以位、功者以禄)」と言いました。仕事で成果を上げたからといって、安易に部長や課長にしてはいけない、「功績」には給与やボーナスで報い、「位(マネジメントの地位)」は「徳」の高い人に与えなさい、ということです。

 経営学の泰斗、ピーター・ドラッカーも「真摯さよりも頭の良さを優先してはいけない」と言っています。ここで言う「真摯さ」とは、まさに「徳」のことです。なぜなら、知能やスキルが高くても、徳(真摯さ)がなければ、その人は組織を破壊する可能性があるからです。

組織を破壊する「カリスマ」
2001年に起きた“大事件”の教訓

 2000年代初頭まで、リーダーシップと言えば「パワーのあるカリスマ」が良しとされる風潮がありました。カエサルや始皇帝のように、凡人にはない才能を持ち、強烈なトップダウンで組織を引っ張る「神に選ばれた人」のようなイメージです。

 しかし、その潮目が大きく変わったきっかけが、2001年10月に起きた「エンロン事件」です。全米有数の巨大エネルギー企業だったエンロン社が、利益至上主義の果てに巨額の粉飾決算を行い、破綻した事件です。利益のためなら不正にも手を染めるという幹部の倫理観の欠如が、結果として会社を消滅させました。この反省から生まれたのが、「オーセンティック・リーダーシップ」という新しいリーダー像です。