オーセンティック(authentic)とは「本物の」「正統な」という意味ですが、リーダーシップの文脈では「自分らしさ」や「倫理観」を重視する姿勢を指します。このリーダーシップには4つの要件があるとされています。

 1つ目は「自己認識」です。自分の強みだけでなく、弱みもしっかりと理解しており、自分は万能ではないと知っていること。 2つ目は「倫理的視点」。利益のためなら何をしてもいいとは考えないこと。3つ目は「バランスのとれた情報処理」。独断専行せず、他者の意見を聞き、内省できること。4つ目は「関係の透明性」。周囲に対してオープンで正直であること。

 つまり、現代において部下を持たせるべきは、自分の弱さを認め、他者を信じて任せることができる「徳のある人」なのです。

 これは欧米だけの話ではありません。ある日本の調査結果で、上司の“人柄”への信頼があれば、部下に対してネガティブなフィードバック(ダメ出し)の効果が高まる一方、上司の“能力”に対する信頼は、ダメ出しの効果とは関係が薄いということがわかっています(※)。

「名選手、名監督ならず」は
なぜ起こるのか?

 ところが、組織は往々にして、仕事ができる人(ハイパフォーマー)を管理職にしてしまい、無惨な結果を招くことがあります。「名選手、必ずしも名監督ならず」という言葉がありますが、なぜプレイヤーとして優秀な人が、マネージャーとして失敗することが多いのでしょうか。

 最大の理由は、「自分よりできない人の気持ちが理解できない」からです。優秀なプレイヤーは、直感的に正解がわかったり、最短距離で仕事ができたりします。しかし、そうではない部下に対して「なぜこんな簡単なことができないんだ」「やる気がないんじゃないか」とイラだちを募らせてしまう。結果、感情的に叱責したり、罵倒したりして、部下の心は離れ、組織は瓦解してしまいます。