2024年6月からM&A(企業の合併・買収)を題材とした池井戸潤氏の小説『ブティック』が本誌でスタートした。そこで特集『総予測2025』の本稿では、池井戸氏と親交があり、池井戸作品のファンである岡本行生・アドバンストアイ社長と、大塚博行・ジャパン・アクティベーション・キャピタル社長を加えた3人で、『ブティック』の魅力と、24年に多発すると予想されているM&Aについて語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
池井戸潤氏、連載小説『ブティック』
若き金融マンの成長と葛藤の物語
――M&Aを小説の題材として取り上げた理由をお聞かせください。
池井戸 中小企業のM&Aの世界には、悲惨なケースが結構あると聞いていました。例えば、会社を売った企業オーナーが、M&A仲介会社に多額の手数料を持っていかれて売却益がほとんど残らなかったとか、会社を売却した際の表明保証(会社の財務情報などが事実かつ正確であると表明し、保証すること。通常は補償期間が2年前後で上限額を設定)が無期限・無制限だったというものまでありました。
そうしたひどいM&Aについての報道が増えたり、中小企業庁が対策に動きだしたりして、少しずつ世の中が問題に気付き始めたわけです。そんなタイミングで題材として取り上げることは、意味があるんじゃないか。
中小企業のM&Aの正しい姿、あるいはひどいケースを小説で描いて警鐘を鳴らすことで、M&Aを考えている方の、手助けができたらいいなと思っています。
連載小説『ブティック』は、主人公の雨宮秋都が、さまざまなM&Aを通して成長していく物語だ。池井戸氏と親交があり、M&Aのプロでもあるアドバンストアイの岡本行生社長とジャパン・アクティベーション・キャピタルの大塚博行社長は、これまでの『ブティック』をどう読んでいるのか。次ページで鼎談の続きをお届けする。