企業のデザインを任されるとは、どういうことか――対話を通じて考える、CDOという役割とその条件

CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)とはどのような人物像であるべきか。その問いに対し、NECでCDOを務める勝沼潤氏は、「深さ・幅・高さ」という三つの軸で仮説を立ててきた。本稿では、その仮説を携え、企業の経営者やデザイン部門のトップ、専門家など12人との対話を通じて得た学びを振り返る。対話を重ねる中で見えてきたのは、「深さ」は決して単一の能力ではなく、思想、プロセス、実装、主体性、そしてアウトプットの届け方など、企業や人によって多様な形を取るという事実だった。その多層的な「深さ」の実像を掘り下げていく。

CDOに求められる三つの軸を対話によって再定義する
――「深さ・幅・高さ」のアップデート

 2025年の初頭から約1年にわたり、私は企業の経営者やデザイン部門のトップ、デザインの専門家など計12人と対話を重ねてきた。企業におけるデザイン活用の可能性、そしてCDOに何が求められているのか――それを探るためである。

 一連の対話を終えて、私が強く感じたことがある。それは、対話を始める以前に自分なりに描いていたCDO像が、方向としては大きく外れていなかった一方で、想像以上に奥行きのあるテーマであり、さらに探究していくべき余地が大いにあったということだ。

 もともと私は、NECでのデザイン組織改革の経験を通じて、CDOに求められる要素は大きく三つの軸で捉えられるのではないか、と考えていた。それが、「深さ」「幅」「高さ」である。

「深さ」とは、デザインについての理解、広範かつ高いデザインスキル、そして自ら手を動かしてきた実践的な経験などを意味する。ひと言で言えば、デザインの専門性である。これがなければ、社内のデザイナーやクリエイターをリードすることはできず、経営層にデザインの価値を伝えることも難しい。

「幅」とは、視野の広さを意味する。デザインに関する専門性があっても、その専門領域にとどまっていては、企業活動に広くデザインの力を生かすことはできない。プロダクト、グラフィックといった個別領域に閉じることなく、企業が取り組む多様な事業やコミュニケーション、経営戦略にまでデザインの力を及ぼしていく。これもCDOには欠かせない要素といえる。

「高さ」とは、デザインというレイヤーから経営というレイヤーに視座を上げて、経営の文脈でデザインを捉え直す力を意味する。企業全体の価値を向上させ、成長につなげるためにデザインがどう貢献できるかを具体的に考えられること。それが私の仮説の3つ目の要素である。

 12人の方々との対話を通じて、その三つの要素の重要性を、私は改めて確信するに至った。それは、単に仮説が実証されたということではない。それらの要素が、私自身の想定を超えて、より本質的で、より重みのあるものという確かな実感を得たからである。

 まずは、第一の要素である「深さ」について、私の学びを振り返ってみたいと思う。