Diamond Premium News

豊田自動織機と三菱ロジスネクストというフォークリフト大手2社への株式公開買い付け(TOB)が、それぞれ同時に実施されている。トヨタ自動車と三菱重工業という“盟主”の意向が強く働いているとみられる2つのTOBは、少数株主からどう見られているのか。TOBのプロセスの妥当性や透明性から検証する。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

発行済み株式の2.2%とTOB成立のハードルは低い
再出資前提のTOBは少数株主との利益相反になりやすい

 時を同じくしてフォークリフトを手掛ける2社、豊田自動織機と三菱ロジスネクストで株式公開買い付け(TOB)が行われている。いずれも、トヨタ自動車と三菱重工業という“盟主”の意向によるグループ再編の一環とみられるが、TOB開始に至る道のりはかなり異なっていた。

 三菱重工の上場子会社、三菱ロジスネクストに対する、日本産業パートナーズ(JIP)によるTOBは1月21日から始まった。TOB価格は1537円。2025年9月の計画発表前日の市場価格を15%下回る「ディスカウントTOB」となった。TOB成立後は非公開化する方針だ。

 その6日前。豊田自動織機へのTOBも1万8800円で開始された。25年6月に発表していた1万6300円よりも15%引き上げ、計画発表時の市場価格に比べると2%のプレミアムが付いている。

 TOBの計画について、米ブルームバーグや日本経済新聞が正式発表の前に報道していた点でも2社は共通している。いずれのケースも報道直後から株価が高騰し、結果的にTOB価格が割安となった。

 フォークリフト大手2社へのTOBの最も大きな違いは、成立のハードルの高さだ。端的にいって、三菱ロジスネクストのTOB成立のハードルは低い。成立に必要なのは発行済み株式のたった2.2%だからだ。このTOBは、親会社である三菱重工の構造改革の一環で行われている。幅広い事業を持つ同社はガスタービン、原子力、防衛を成長事業と位置付け、それらとシナジーが薄い事業の整理に着手している。その経緯は、特集『重工バブルの真相』の#2『三菱重工がフォークリフト子会社を売却、専業メーカーに勝てない「量産品ビジネス」が次なる構造改革のターゲットに』で詳述している。

 三菱重工は計画を発表した25年9月末時点で三菱ロジスネクスト株を64.5%保有していた。TOBには参加しないが、臨時株主総会で株式併合に賛成する予定だ。三菱重工の持ち分とTOB成立の最低条件である2.2%と合計すると議決権の3分の2に達し、株式併合を特別決議してTOBに参加しなかった株主から強制的に株式を買い取る「スクイーズアウト」を実施できる。仮に9月末時点で4.4%を保有するGSユアサが参加すれば、それだけで条件はクリアとなる。

 これに対して、豊田自動織機の場合は発行済み株式の42.0%をTOB成立の条件としている。9月末時点で24.6%を保有するトヨタ自動車がTOBには参加せず、TOB成立後の臨時株主総会で株式併合に賛成票を投じる計画となっている。

 TOBに賛同を表明しているトヨタグループのトヨタ不動産、デンソー、アイシン、豊田通商――の4社が合計17.6%を保有している。それでもTOBを成立させるには残り24.4%を買い付ける必要がある。

 親会社の意向による上場子会社のTOBには、少数株主との利益相反の恐れが付きまとう。経済産業省が定めるM&Aの指針や、金融庁と東京証券取引所が策定した「コーポレートガバナンス・コード」は公正性を担保するよう求めている。

 三菱ロジスネクストの場合は、非公開化後に三菱重工が300億円を再出資する計画になっている。なおのこと、少数株主から信任を得る姿勢が求められるだろう。

 次ページでは、2社のTOBを五つの観点で比較した表を示す。アクティビスト(物言う株主)の米エリオット・インベストメント・マネジメントが「透明性を欠いたプロセスで進められ、適切なガバナンスの水準を満たしていない」と批判するなど、市場の反発もあってTOB開始までに対応を変えた豊田自動織機のケースと、事前の計画通りに実施した三菱ロジスネクストのケースのギャップが浮き彫りとなった。