友人の嘘で医学部に落ちた父が、それでも「人生の成功者」なワケ
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で元気が湧き出る言葉』(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。
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人生に「損」なんてない、というお話
今日は「人生、損してもいいのよ」というテーマでお話ししたいと思います。「損してもいい」と言いましたが、厳密に言えば、「人生に損なんてないよ」ということを、今日はお伝えしたいのです。
これをお伝えするために、まずは私の父のエピソードをご紹介させてください。
父の「回り道」と日本への留学
私の父は、もともと医学部志望でした。しかし現役時代は点数が足りず、別の学部へと進み、一度は社会人になりました。けれど、祖父も医師だったことがあり、父は非常に負けず嫌いでした。
「やっぱり医者になりたい」という悔しさが消えず、社会人になってから、しかもすでに結婚して子ども(私の兄姉)がいる状態で、医学部の再受験を決意したのです。結果、父は見事に合格しました。父も母も台湾の出身なのですが、なんと日本の大学に合格したのです。
そこからは大変でした。親戚中からお金をかき集め、なけなしの貯金もはたいて日本へ渡りました。そして、家族全員で四畳半一間のアパートで暮らしながら学生生活を送るという、極貧生活が始まりました。無事に医師免許を取得し、日本で開業して生活が少し落ち着いた頃に生まれたのが、私です。
「友人の嘘」と数年のロス
そんな苦労人の父が、よく口にしていた言葉があります。「俺はあの時、回り道をした」。父の言い分はこうです。
当時、台湾で一番の大学を受験するために台北へ行った際、友人に「おまえの親が危篤だ」という嘘をつかれ、試験直前に一度実家へ帰らされたそうです。そのせいで勉強時間と睡眠が削られ、社会科の点数が足りずに落ちてしまった、と。
「あの悪友のせいで人生を損した。回り道をした」。そう嘆く父は、私に対して「おまえは回り道せずに、ストレートに医学部を目指せ」と常々言っていました。私は父が怖かったので、「そうだね、頑張るよ」と勉強して医学部に入りましたが、心の中では少し疑問を感じていました。
その「回り道」があったからこそ
父は社会人を経て医学部に入り直すことで、数年の時間を「ロスした」と考えていました。しかし、私はこう思うのです。「それも含めて、お父さんの人生だよね」と。
友人の件が本当かどうかはさておき、一度失敗して悔しい思いを募らせたからこそ、「日本に留学してやる!」という強いモチベーションが生まれたのかもしれません。もし父が現役ですんなり合格していたら、その後の人生のルートは変わり、私はこの世に生まれていなかったかもしれないのです。
そう考えると、父が嘆く「損」は、私の人生にとっては不可欠な要素であり、広い目で見れば「損」など存在しないことになります。
唯一無二の自分の歴史を愛する
「早く医者になること」だけが人生の目的であれば、数年の遅れは「損」かもしれません。しかし、人生はそれだけではありません。親戚にお金を借り、異国の地の四畳半で家族身を寄せ合って暮らす……そんな濃密な経験は、その状況でなければ味わえなかった貴重な「歴史」です。
人生において、「あの時こうしていれば」「これを選ばなければよかった」とクヨクヨしてしまうことはあるでしょう。しかし、SF映画のようにパラレルワールドを選ぶことはできません。現実には、自分が歩んできたその道が、たった一つの自分の人生です。
そもそも人生に損なんてない
思ったようにいかなかったこと、悩んで苦しんだ時期――それらすべてがつながって、今のあなたが存在しています。「損得」というのは、あくまでビジネスや株の世界の話であって、人生には当てはまらないのです。
「損しちゃったな」と思ったら、こう考えてみてください。「損してもいいや。そもそも人生に損なんてないんだから、これも私の大切な歴史の一部だ」と。そうやって自分の歩みを肯定してあげることで、また明日から元気になれるのではないかと思います。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。






