「シスター・バーナデットは実に極端な例だった。新皮質にはプラークと神経原線維変化がたくさんできていたのに、その部分の働きはほぼ無傷で保たれていたのだ。まるで彼女の新皮質には、理由はどうあれ強靭な抵抗力があるかのようだった。

 シスター・バーナデットのような例を、私たちは『逃げおおせた人』と呼ぶようになった。症状が表に現れるより早く、寿命が尽きた人のことである」

認知症が発症しなければ
人生の晩年も楽しめる

 寿命より前に認知症が発症しなければ、充実した人生を送れる。つまり、年齢を重ねても、脳に「理由はどうあれ強靭な抵抗力がある」ならば、人生の晩年をイキイキと生き切れるというわけです(図表1-6)。

図表1-6:寿命までに認知機能が生活に必要なレベルを下回らなければ同書より転載 拡大画像表示

 イメージしてみてください。脳に100本の神経がつながって正常に機能しているとして、それが50本に減ったぐらいであれば、少々動きが鈍くなるとか、物覚えが悪くなる程度ですむかもしれません。でもそれが10本に減ったらかなりの不具合が起こるでしょう。さらに5本になり、1本になり……と減っていっても、「1本でも残っているか」「0になるか」の間には、大きな差があります。

 0にならず「逃げおおせた人」になるためにできることは、

 もともとの神経細胞同士のつながりの数を増やす

 神経細胞同士のつながりの数を減らさない工夫をする

 この2点でしょう。

 ナン・スタディでは、神経細胞同士の必要なつながりの数が0にならず「逃げおおせた人」とそれでない人を分ける重要なカギが、「言語能力」にあると示唆しています。