年金制度大改革 損↓得↑徹底検証 #5Photo:PIXTA

在職老齢年金の年金減額基準の引き上げ、繰り下げ受給と在職老齢年金の関係、高所得者への年金保険料増額、遺族年金の改正案など、スライド適用期間一致と適用拡大以外にも今回の制度改革に関連した重要な事項がある。特集『年金制度大改革 損↓得↑徹底検証』の#5では、そうした改革項目についてQ&A方式で解説する。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)

高齢者の労働意欲をそがないために
在職老齢年金の改正は不可欠

 2024年の財政検証を受けた今回の制度改革では、マクロ経済スライドの適用期間一致による基礎年金の底上げや短時間労働者への厚生年金の適用拡大が注目されることが多い。

 この二つは年金の受取額、手取り賃金額、企業負担への影響が大きいだけに、取り上げられることが多くなるのは無理もない。

 しかし、他にも今回改正される事項はもちろんある。

 今後、65歳以降もしっかり働く高齢者は現状より増えていくだろう。そういう方たちの意欲をそがないためにも、多額の収入を得ると年金の一部が支給停止になる在職老齢年金の改正は不可欠だ。支給停止額は繰り下げ受給による増額にも影響する。

 現在、いくら収入があっても一定額を超えると、支払う厚生年金の保険料は頭打ちになる、受け取る年金額も増えなくなる。これらにも今回の改革でメスを入れる予定だ。

 公的年金制度には、第3号被保険者以外にも、夫が働き妻は専業主婦という世帯モデルを前提とした制度がある。それが遺族年金だ。

 次ページでは、マクロ経済スライドの適用期間一致による基礎年金の底上げや短時間労働者への厚生年金の適用拡大以外の、今回の制度改革で注目すべきポイントをQ&A形式で解説してゆく。