今後10年間の日本の労働生産成長率(年率)
に対するAIの寄与

生成AIの利用が急速に広がる中で、AIが日本経済の生産性や成長率を押し上げるとの期待が高まっている。AIがマクロ経済に与える影響は不確実性が大きいものの、米国を対象とした研究では、生産性や成長率を年率1%前後押し上げるとの見方がある。
一方、日本経済がAIから受ける恩恵は、米国に比べ小さいとの見方が多い。例えば、G7(先進7カ国)諸国を対象としたOECD(経済協力開発機構)の試算によると、AI技術がコンピューターやインターネット並みのスピードで普及すると想定した場合、今後10年間の生産性押し上げ効果は日本で年率0.51%と、米国(同0.99%)の半分程度にとどまると予想されている。
日本の生産性向上効果が米国に劣る背景として、情報サービスや金融といったAIの影響が大きい産業のウエートが小さいという産業構造の違いがある。加えて、企業のAI利用の遅れも挙げられる。OECDの分析によると、現時点で日米企業のAI利用率には大きな差があり、今後10年間で利用率の格差は一段と拡大すると見込まれている。
もっとも、企業のAI活用をやみくもに推進するだけでは、日本経済の成長にはつながりにくい。AIによる生産性の向上を経済成長につなげるには、AIを活用してイノベーションや新たな需要を生み出す取り組みが求められる。AIがヒトの作業を代替する自動化を目的とした利用にとどまれば、労働需要は減少し、雇用の不安定化を招く可能性がある。米国では、AIの導入を理由に雇用削減に踏み切る企業が出てきており、雇用への悪影響を懸念する声が広がっている。
深刻な人手不足に直面する日本企業にとって、業務の自動化・効率化を目的としたAI活用へのニーズが高い。一方、新商品やサービスの開発、新規市場の開拓などを目的としたAIの活用は後回しにされがちである。
日本経済の成長には、AIを新たな需要の創出につなげる取り組みが重要だ。政府には、そうした企業を後押しするインセンティブの付与や制度整備が求められている。
(日本総合研究所 調査部 副主任研究員 村瀬拓人)







