「相手」ではなく「自分」に焦点を向ける

 そこで私は、次のようなお話をさせていただきました。

「『自立』というのは、あなたがこれから生きていく上で大切なキーワードではないでしょうか。そう思ったのであれば、それを改めることに集中する。彼女がどうこうではなく自分のことに集中する。そうすれば、怒りから解放され、人間不信からも解放されます。次の職場ではうまくやっていけますよ」

 と。

 この彼の表面的な悩みは「職場の人間関係」ですが、問題の本質は、元交際相手への「しつこい怒り」が原因だったのです。

 その「心のあり方」が、ほかの人間関係にも悪影響を及ぼしていたのです。

 たとえば、何かせっかくのいいご縁があっても、相手を過剰に警戒したり、疑ったり、ときには攻撃したりして、知らず知らずのうちに関係を壊してしまっていたのです。

 そして、その「しつこい怒り」は、「自分」がどうこうではなく、「相手」に傷つけられて悔しい、「相手」のひどい仕打ちが許せない、という思いから生まれていました。

「相手」ではなく「自分」に焦点を当て、ケアをする。そうしないと「しつこい怒り」からは解放されないのです。

「尊敬」さえも怒りに変わる

 こんな話もあります。

 Aさんは職場にとても尊敬する先輩がいました。仕事はできるし、人間性もすばらしい。ロールモデルにしているあこがれの先輩です。

 その先輩がメンターとして仕事をサポートしてくれることになり、Aさんは大いに期待しました。実際、間近で見る先輩の仕事ぶりは感動するほどで、Aさんは「一生、この先輩についていこう!」という勢いで仕事に取り組んでいました。

 そんなある日、Aさんは、その先輩から新しいプロジェクトへの参加を提案されました。が、Aさんはまったくの専門外で、自分が得意ではなさそうな―どころか、むしろ苦手な分野のプロジェクトです。

 正直、あまりやりたくないな……と思ったものの、「先輩がすすめてくれるのだから間違いない。自分には必要な経験のはずだ」と自分を奮い立たせてプロジェクトに参加しました。