ところが、取り組んでみると、やはりイヤでイヤでしかたない。うまくやれない。でもプロジェクトはどんどん進んでいく……。そんな向き合い方では、当然ですが、仕事のパフォーマンスは上がりません。成果も出せません。

 先輩から「調子はどう?」と声をかけられると、はじめのうちは「なんとか、がんばっています!」と元気を装っていました。

 しかし、しだいに、先輩に対して「私はこんなに苦しんでいるのにどうして気づいてくれないんだ!」「もっとわかってくれてもいいはずなのに!」と、怒りが芽生えてきてしまったのです。

「期待」も怒りに変わりやすい

 結局、Aさんは、メンタルを病み、先輩との関係もうまくいかなくなり、そのプロジェクトから降りただけでなく、会社もやめてしまったそうです。

 ところが、プロジェクトを離れ、会社をやめれば心がスッキリするかと思いきや、なかなか気分が晴れません。新しい職場を探す気持ちにもなれない。どうすればいいのか……と悩み、私を訪ねてきたのです。

 お話を聞いていく中でわかってきたこと。それは、

「期待と思い込みが怒りの原因になった」

 ということです。

 Aさんは、先輩を尊敬するあまり、先輩に自分のすべてをゆだねていました。先輩は絶対的な存在で、先輩ならすべてちゃんとわかってくれる。全部任せておけば安心だ。そんな期待もあったようです。

 けれど実際は、好きではないことも、苦手なことも、厳しいビジネスの世界では、基本的に自分でなんとかしなくてはなりません。

 先輩が師弟関係を望んだわけではなく、自分についてこいといったわけでもない。Aさんは勝手に「師弟関係はこうあるべきだ」と思い込み、「師弟関係はこうあってほしい」と期待を持ってしまっていたのです。

「こうあってほしい」「こうあるべきだ」という危険な思い込み

「こうあってほしい」という期待や、「こうあるべきだ」という思い込みは、怒りと紙一重の諸刃の剣です。

 その思い込みや期待が大きければ大きいほど、思いどおりにならなかったときのショックや落胆は大きくなります。裏切られたような気持ちになって、相手に対する強い怒りを感じてしまうのです。

 つまりAさんの怒りの原因は、先輩ではなく自分にあったわけです。

 私がこの話をすると、Aさんはとても驚いていました。