では、いつ育つのか。それは、修羅場を経験したときです。

人が育つのは
「修羅場」を越えた後

 私は研修講師として、年間200回以上の研修に登壇しています。

 正直に言えば、研修を受けただけで行動が変わる人は、多くて1割です。

 ほとんどの人は「わかる」で止まり、「できない」「やらない」まま終わります。

 ところが、研修後に具体的な課題を課し、現場で試す機会を与えると、状況は一変します。 多くの人が「できる」に変わるのです。

 人が育つためには、うまくいかずに悩み、自分で考え、動き、試し、そして突破する体験が必要なのです。

 多くの識者がこの状態を「ラーニングゾーン」あるいは「修羅場体験」と呼び、その重要性を指摘しています。

任せられない職場で
部下は育たない

 だからこそ育成では、 本人にとって少し難度の高い仕事を任せることが重要なのです。

・ 目標を伝え、期待をかける
・ 少し背伸びが必要な仕事を渡す

 重要なのは、「できるようになったから任せる」のではなく、「任せるから、できるようになる」という発想です。

 どんな部下も、最初は未完成な資産です。任せて、磨いて、支えることで、会社にとって欠かせない価値へと変わっていきます。

 育成は投資です。放っておいて増える資産などありません。リスクを取って運用した資産だけが、大きく育つのです。

「任せること」を避けている職場では、いくら丁寧に教えていても部下が育ちません。

「能力開発テーマ」を
一緒に決める

 成長を促すためには、仕事を通じて、「身につけるべき能力」を一緒に決めることが重要です。

 もし「何を伸ばすべきかわからない」と感じたら、次の方法が使えます。

(1)職級別の職務要件を確認する

 多くの会社では、等級ごとの期待役割が定義されています。これは会社としての必須条件です。上司として要望すべき内容だといえます。

(2)社会人基礎力を使う

 経済産業省が提唱する「社会人基礎力」は、汎用性の高い指標です。

 12要素をスキルとスタンスに分けて対話すると、納得感のある目標設定ができます。

 成長は偶然に任せるものではありません。「何を伸ばすか」を一緒に考えることが、部下の成長ストーリーを描く第一歩です。