
「なして私のすべてを奪おうとするんですか」
三之丞も働きはじめていた。なんと荷下ろしという肉体労働。
力こぶを作ろうとするが華奢(きゃしゃ)すぎて……。いたましい。第94回は何かといたましい回である。
タエの作った昼食には、何か食べられないものが混ざっていた。でもトキはこっそり出してなにごともないように振る舞う。
「すごくおいしいよ」と三之丞。彼は毎日何もいえずに我慢して食べているのだろうか。
こんなふうに気丈に振る舞っているのは、トキのためだった。
「この頃、家のことをするのが楽しくて、ですから大丈夫よ」とタエは自分たちのことは心配しないで熊本に行くように気遣う。
三之丞はトキに借金を返そうとする。10円にも満たない、少しばかりのお札。
このシーンで筆者が思ったのは、三之丞がトキに良かれと思って借金を返済することが、トキにとっては、自分は結局ヘブンに返済してもらったという罪悪感につながらないだろうかということだった。
私はまだ熊本に行くと決めたわけではないと困惑するトキに、「いいんですよ。自分のために正直に生きて」とタエ。
深くお辞儀をして帰っていくトキ。
帰ると、ヘブン邸には勘右衛門(小日向文世)が来ていて、松江に残ることにしたと言う。
熊本に一緒に行くのはトキのためにならないという。
タエはなにもいってなかったと知って「あのかたはほんとうに奥ゆかしいのう」と勘右衛門は、タエや自分の考えをトキに明かす。
一緒にいると、ヘブンが家族全員の金銭的援助をしていると思われて、不評を買うのではないかと心配しているのだ。
「それは熊本もどこも同じじゃ だけん一緒におらんほうがええ」
それを聞いて、司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)も行かないほうがいいだろうかと考えはじめる。
ヘブンは「わかりました。我々ふたりだけ、熊本にいく、しましょう」と決意する。
「え?いや!いや! ダメ!ダメ!ダメ!」







