なぜアベノミクスで円安が続いても
企業の国内回帰は進まなかったのか

 企業は、海外に工場を建設し現地で従業員を雇い生産を始めることを、相当の覚悟を持って始めている。それを国内回帰なんて、簡単には出来ない。設備投資とその資金の回収は10年単位であり、数年で止めて日本に戻るなんて考えにくい。しかも、この頃から少子高齢化に伴う労働力の確保が難しくなり始めた。日本に戻ろうにも従業員を確保できない、ノウハウが失われているなどの問題も発生していた。

 円安も「逆」効果を生んだ。一般的に日本企業の海外資産や収益は円建てで評価するが、円高になると円ベースの評価額が下落する。それを防ぐために為替ヘッジという手法が使われる。コストを払って為替変動が発生しないようなスキームを取り入れるのだ。

 しかしアベノミクス以降の円安トレンドで、円高リスクとそのヘッジの必要性は薄れ、コストのかかる為替ヘッジはあまり行われなくなった。皮肉にも、円安は企業の国内回帰を促すのではなく、為替差損やヘッジコストを気にせずに海外進出する行動を後押ししたのだ。

 さらにいえば、日本企業は国内生産して輸出しようにも、全ての原材料を国内で調達できるわけではない。原材料は海外から輸入し、付加価値を生み出して輸出するわけだが、原材料輸入分は円安でコストアップしている。従業員も人材不足なので、外国人労働者を雇う必要がある。となると、消費地に近い現地で生産する方が合理的と考える企業経営者が多いのも当然だ。

政策が絵に描いた餅で
終わらないためには?

 高市政権の「日本を元気にする」方針、そのために「国内投資を増やす」という方向性は評価できる。しかし、労働力の確保、ノウハウ消失の回復、生産拠点の分散化などの課題を解決できなければ、絵に描いた餅に終わる。積極財政による国内投資だけでは解決できない問題が存在するのだ。