仮に積極財政で政府主導の国内投資を行うなら、その投資を通じて労働力が確保できる道筋を整え、ノウハウを再構築すれば、企業も国内回帰しやすくなるだろう。労働力確保の手段として外国人労働者の活用推進が難しければ、ロボット化による省力化も有効だろう。その際、海外企業と連携して国内投資を進めるのも有効だ。
熊本県に台湾の半導体受託製造・TSMCが進出した際、日本における生産体制の構築に難儀したという。24時間稼働での推進を前提とするTSMCは、人材確保をはじめ工場関連施設やインフラ整備のノウハウも、台湾のほうが優れていると感じたこともあったそうだ。日本で再び生産拠点を拡大する場合、同様の課題が多発する可能性が高い。
このように深く考えていくと、円安になっても多くの日本人がそのメリットを享受できない可能性がある。企業は国内に回帰せず、輸出が増えない一方で、食料やエネルギーの輸入コストは拡大が予想される。また、国内回帰したとしても日本人にとって望ましい雇用機会が増えるとは限らない。
最後に、高市首相の外為特会ホクホク発言に戻ろう。外為特会の中身は、かつて円高の際に行われた為替介入を通じて保有した外貨であり、急激な円安などの為替有事に使うための「虎の子」資産である。外貨が必要な円買い介入には限りがあり、これを減税などの財源に使うのは適切とは思われない。円安のメリットとして挙げるべきものでもない。
以上、筆者が30年以上マーケットや企業行動を見聞きした現実を踏まえて、考察してみた。実態を見ずに表面的な円高・円安の是非を論じても机上の空論に終わる。これまでの経緯を踏まえた日本の構造問題を、政治も国民も改めて認識し、どのように解決すればいいのか議論することが必要なはずだ。今回の騒動が、そのきっかけとなることに期待したい。









