社会人の独学が失敗しやすい原因は、努力不足ではなく「学び方」にある。本書『ULTRALEARNING 超・自習法』は、忙しい毎日の中でもスキルを最速で身につける具体策を提示する一冊だ。本連載では、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった本書の「学習メソッド」を紹介していく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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「書き写しただけのノート」が役に立たない理由
ノートを何度も読み返しているのに、いざ説明しようとすると言葉が出てこない。
そんな経験はないだろうか。
これは、学習がうまく定着していないサインである。
本書では、この状態を乗り越えるための重要な考え方として「回想」が紹介されている。
回想とは、見たり読んだりして覚え直すことではなく、頭の中から情報を思い出そうとする行為を指す。
テストで答えを考える瞬間や、誰かに説明しようとして言葉に詰まる場面が、まさに回想だ。
本書には、「回想は学習において非常に強力な手段」だと書かれている。なぜなら、思い出そうとして失敗する過程そのものが、記憶を強化するからだ。
逆に、ノートを眺めたり、マーカーを引いた箇所を読み返したりするだけの復習は、脳にほとんど負荷をかけない。その結果、「わかったつもり」になっただけで、知識は定着しにくい。
多くの人がやっているノートの書き写しは、回想がほとんど発生しない。安心感はあるが、学習効果は驚くほど低いのだ。
この問題を根本から解決するために登場するのが、本書で紹介されている質問帳という戦術である。
「質問」に変えるだけで変わる
質問帳とは、ノートを「答え」ではなく「質問」で埋めていく方法だ。
たとえば年号を覚える場合も、「1215年」と書く代わりに、「マグナ・カルタは何年に調印されたか?」と記す。
さらに、答えを忘れたときのために、どこを見れば参照できるかも一緒に書いておく。
これだけで、そのノートは回想の練習に使える教材へと変わる。
回答ではなく質問としてノートをとることで、後で回想の練習に使える教材をつくれるのである。(『ULTRALEARNING 超・自習法』より)
質問は「思い出す負荷」を意図的に生み出す。仕事で忙しい社会人にとって、勉強時間を増やすのは簡単ではない。
だが、同じ時間でも「質問」という形に変えるだけで、学習効率は大きく変わるだろう。
細かすぎる質問は逆効果
質問帳は万能に見えるが、使い方を誤ると逆効果になる。
本書では、著者自身の失敗例が率直に語られている。
著者は専門性の高い教科書を学んでいた際、数値や人名など、細部ばかりを問う質問を大量に作ってしまったという。
それは意図的にそうしたのではなく、教科書に載っていた事実を機械的に言い直していただけの結果であった。(『ULTRALEARNING 超・自習法』より)
どんな質問がいいのか?
では、どんな質問を作ればよいのか。
本書で示されている実践的なルールが、「1つの章やセクションにつき、質問は1つだけにする」というものだ。
この制限をかけることで、学習者は「この章の要点は何か」を考えざるを得なくなる。ここで初めて、理解が始まる。
知識を削ぎ落とす作業こそが理解を深める。質問帳は、量ではなく質を学習者に要求する学習法だ。
正直に言えば、この作業は楽ではない。だが、その面倒くささこそが、回想を生み、学習効果を高めている。ノートが進まない日は「今日は脳トレの日だ」と思えばいい。
質問力が武器になる時代
質問帳の考え方は、生成AIが普及した現代社会とも相性がいい。答えそのものは、以前よりも簡単に手に入るようになった。
だからこそ差がつくのは、何を問えるかである。問いが浅ければ、得られる理解も浅い。
ノートを取っているのに成長実感がないなら、一度やり方を疑ってみるといい。
答えを書くのをやめ、質問だけを書く。それだけで、学びの質は大きく変わるだろう。





